キミが大人になる頃に。―環境も人も豊かにする暮らしのかたち (石田 秀輝・古川 柳蔵)
低環境負荷型ライフスタイル
地球環境問題をテーマとした書籍は数多くありますが、本書は、「低環境負荷型ライフスタイル」をテーマに、その実現の前提となる「人びとの意識の持ち方」や「具体的な暮らし方の提示」等をとても優しい書きぶりで紹介していきます。
冒頭、以下のような問題意識が提示されています。
ここで目指すべき方向としてされるものが「低環境負荷型ライフスタイル」です。
地球環境問題は、すべての人々にとって逃げることのできない大きな課題です。この「地球環境問題」として扱われている具体的なリスクとしては、地球温暖化 資源・エネルギー問題、生物多様性の急速劣化、人口増加等々が挙げられます。が、これらの個々の問題の根本に遡って探っていくと、「人びとの暮らし方=ライフスタイル」にたどり着きます。
となると、地球環境問題を根本的に解決するためには、従来型の「人びとの暮らし方=ライフスタイル」を変えていかなくてはなりません。
では、いったいどういう姿に変わらなくてはならないのでしょうか。
どうやら、従来のような「外向・拡大」型の延長線上には解はなさそうです。私たちを取り巻く環境を制約条件として、その中での「豊かさ」を追求していくというスタイルに変わっていかなくてはならないようです。
バックキャスティング思考
地球環境問題に対応する将来の私たちの暮らしぶり、その時の具体的な社会・生活はどうなるのでしょう。どうすれば、新たな「ライフスタイル」の具体像をつかめるのでしょうか。
まず、著者は、今から先を考える「フォアキャスティング思考」だけでは、生存のための制約条件を前提とした低環境負荷型ライフスタイルの具体像を描くことは困難だと考えています。そのうえで、現実的な実現案を生み出すメソッドとしての「バックキャスティング思考」を提唱しているのです。
バックキャスティング思考で「暮らしの方向性」を明らかにし、フォアキャスティング思考で、それに向かう「現実解」を考える、こういうデュアル思考の薦めは非常に興味深いものがあります。
この思考方法を適用すると、今後のマーケティング活動においては、以下のような方法論が求められることになります。
そして、この方法論で発想された今後の変化や製品・サービスアイデアを網羅的にまとめたものが、「2030年の曼荼羅」(p148)です。これは、マクロ環境予測・生活者の行動・生活者の欲望・具体的製品・サービスを同心円状に表現したもので、とても参考になります。
最後に、ひとつ、特に私の関心を惹いた部分を覚えに記しておきます。
「オリジナリティとはオリジンに戻ることである」
本書で紹介されてるアントニオ・ガウディのこの言葉は蓋し名言ですね。
「『独創性』は『根源的』である」、まさに的確に本質を突いた指摘です。
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