諜報の天才 杉原千畝 (白石 仁章)
杉原千畝氏(1900年1月1日~1986年7月31日)は、第二次世界大戦前後の時期に活躍した外交官です。
リトアニアのカウナス領事館に赴任していた当時、ナチス・ドイツの迫害によりポーランド等欧州各地から逃れてきた難民たちに対して大量のヴィザを発給し、数千人にのぼる難民を救ったことで有名ですね。
本書は、杉原氏の研究をライフワークにしている白石仁章氏による「杉原伝」です。
ただ、その着眼は、「日本のシンドラー」と言われた「命のヴィザ」の発給にかかわるものではありません。本書のタイトルにもあるように「諜報の専門家」(インテリジェンス・オフィサー)としての杉原氏の足跡・功績を、大量の外交文書/電報等をもとに解明し詳細に紹介したものです。
著者により具体的に明らかにされた「インテリジェンス・オフィサー」としての杉原氏の活躍は、それはそれで興味深いものがありましたが、やはり、私として気になるのは「命のヴィザ」発給にかかわるエピソードでした。
しかしながら、その点についての記述は、本書の全体のヴォリュームに比するとごく少量に止まっています。
そのわずかな記述の中でも特に興味深かったのは、「通過ヴィザ」の発給を正当化するために杉原氏がとった奇策でした。
本省から指示されていた厳しい資格要件を如何にしてかいくぐり、少しでも多くの人々へヴィザを発給したか。著者は、ここに紹介している一連の杉原氏の行為を、自己が独断で発給しているヴィザの有効性を担保するための工作だったと解しています。
事実、この時期に発給されたヴィザを携えた人々の日本入国は果たされました。ともかく杉浦氏のとった超法規的な勇気ある行動が、数多くの罪なき人々を悲惨な運命から救ったのでした。
ちなみに、先の東日本大震災に関係してこういう記事もありました。
2011年4月3日時事通信社からの配信です。
杉原氏の英断は、世界のあちこちから日本を見つめる暖かい目となって現在にも生きているのです。
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