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ひとりじめ(浅田 美代子)
(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)
笑福亭鶴瓶さんのラジオ番組に浅田美代子さんが出演されていて、この本が話題になっていました。
樹木希林さんとの思い出を中心に、浅田さんの若い頃からのエピソードもふんだんに盛り込まれた内容ですが、ともかく浅田さんのとても素直で純朴な人柄そのままに “爽やかテイスト” のエッセイです。
早速、本書で私の関心を惹いたところをいくつか書き留めておきましょう。
まずは、樹木希林さんの「整形」談義。
浅田さんは、ときに、樹木さんとTVのワイドショーを見ながら、登場する女優さんの整形をネタに話し込んだそうです。フランクなお付き合いの深かった浅田さんならではの “情報” ですね。
(p36より引用) 希林さんは、整形そのものを否定していたわけではない。「役者が整形すること」に反対していただけだ。・・・様々な人間を、様々な人生を演じる役者を生業とするならば、「整形はよくない」と、何度も話していた。・・・
「整形したら、整形した人の役しかできなくなっちゃうよね。市井を生きている人を演じても、嘘っぽくなってしまうじゃない。この仕事をしながらも、その役を生きることよりも、自分が美しく見られたいから整形するだなんて。私にはさっぱり理解できないよ」
樹木さん流の “役者論” の一端です。
もうひとつ、「何で私には役のオファーが絶えないんだと思う?」と尋ねた樹木さんの答え。
(p38より引用) 「そう?それよりもね、単純な理由があるんだよ。それはね、私がちゃんと歳をとっているから。日本には幾つになっても、その歳に見えない美人女優さんが多いでしょう。でも私は、歳相応のおばあちゃんに見えるおばあちゃんだから、おばあちゃん役はみーんな私のところに来るの!」
(p39より引用) 「歳をとることを面白がらなきゃ!」が希林さんの持論だ。
「人間って、経年とともに変化していくから面白いんだよね。若い頃の美しさに固執している人は面白くないし、50歳を過ぎたら50歳を過ぎたなりの、60歳を過ぎたら60歳を過ぎたなりの、何かいい意味での人間の美しさっていうのがあると思う。それにね、70歳近くにもなって、40代に見えたところで、40代の役は来ないよ」
“老い” に向かう自然体の心の持ち方、そして、この言い様もまさに樹木さんらしさ満開です。(とはいえ、樹木さんがTBSドラマ「寺内貫太郎一家」でおばあさん役を演じたのは31歳のときでしたが・・・)
さて、自らの半生を振り返りつつ、樹木さんとの思い出を語った浅田さんですが、本書の「あとがき」にこう記しています。
(p191より引用) 大切な人の死は乗り越えたりするものではなく、生涯付き合っていくものなのかもしれないとも思えるようになった。私は、この先の人生も、希林さんと生きていく。
次のステージも “樹木さんとともに歩み続ける” という心情でしょうか。
なるほど、お二人のお付き合いならきっとそうなんだろうなと、心に沁み入った言葉でした。
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