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アイスランド 絶景と幸福の国へ (椎名 誠)
(注:本稿は、2016年に初投稿したものの再録です)
いつもの図書館の新着書の棚で目に止まった本です。
椎名誠さんの旅行エッセイですが、採録されているナショナル・ジオグラフィックの写真も見応えがあります。
アイスランド、あまり馴染みのない国ですが、何かしらとても惹かれるものがありますね。その名前のせいかもしれません。
とはいえ、椎名さんの印象はかなりワイルドなものでした。
(p56より引用) 大地の下でナニモノカが沸騰している、という感触だった。近くにあまり高い山はないが近隣の低い山のどこか、あるいは谷のどこか、もしかすると低い湿地帯などというところからまんべんなく硫黄ガスが噴き出しているようだった。・・・アイスランドはその名とは裏腹に、けっして冷たく凍結している孤島などではなく、まだしきりに島全体が躍動し、さらに大きくなるための熱い成長過程にあるような実感がある。
海岸線はフィヨルド、内陸は火山や氷河・・・、決して肥沃とは言えない大地は天真爛漫な世界です。
そして、そこに暮らす人々もそうでした。
(p68より引用) レイキャビクからまだ500キロ程度移動してきただけだが、たったその間だけでも、いたるところでこの国の基本的な考えかたがかいま見える。
・・・キーワードは、・・・「自己管理、自己責任」で、その精神が社会の基本になっている風景だのだった。
その “自己責任” において、アイスランドの人々は自然な暮らしを謳歌しているようです。
OECDが発表している世界各国の「幸福度ランキング」で9位の国。
(p150より引用) アイスランドは先進国であり、経済も食事事情も国際間の位置づけもそこそこのところにある。・・・
火山などの自然環境の激変などの不安は常にあるが、いまのところ人々はどんな人に対してもここちいい笑顔で応対し、楽しいことがあるとみんなで屈託なく笑い合うことができる―国になっている。
それに対して、「日本」は? 今まで数々の国を訪れている椎名さんはこう語っています。
(p167より引用) ぼくはこんなふうに、世界のいろんな土地で書き切れないくらいのさまざまな風景を見てきた。そうして、いつの旅でもやがて日本に帰ってくる。
そのとき必ずいつも形容の難しい「違和感」におそわれる。しかもそれは外国に行くたびに増していくのを感じる。
電子化社会というのだろうか。生活の多くのありようが強引にシステム化され、人々はその仕組みのなかでそれぞれ指令された方向にコントロールされ、せわしなく緻密に動かされている印象を受ける。
都市の大きな駅などではそれまでの旅で見てきた同じ人間の生きる世界とはとても思えないような風景にたじろぐ。
アイスランドの “生活の豊かさ” は、日本のそれとは異次元なのでしょう。国自体が、そしてその国に暮らす人々が拠って立つ「礎」そのものが全く異なっているのだと思います。
そして、たまたま映画「センター・オブ・ジ・アース」を観直していたら、レイキャビクが登場。
アイスランドは、ジュール・ヴェルヌの代表的SF作品「地底旅行」の舞台でもあったのですね・・・。