通訳日記 ザックジャパン1397日の記録 (矢野 大輔)
(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)
サッカーは大好きです。とにかく面白いサッカーを見るのが好きです。その点、日本代表のスタイル(注:2015年当時)は正直あまり好きではありません。ワクワクしないんですね、
日本代表にはロナウジーニョもズラタン・イブラヒモビッチもいないのです。もちろん「監督のチーム構想に応じた代表選出」がベースにありつつも、やはり素材としての選手のタイプから、自ずとそのチームのサッカースタイルはかなり規定されてしまうのでしょう。
そのあたり、ザッケローニ氏が監督として日本代表をどうプロデュースしていったのか、ああいったスタイルに導いた必然性がこの本で語られているかもしれないと期待して手にとってみました。
今の日本代表のサッカーを見ていて、おそらく誰しもが最も不満に思うこと。それは、しばしば中盤で交わされる「意思のない横パス」でしょう。
2011年1月9日アジア杯初戦ヨルダンと引き分けた試合後の監督のコメントです。
そして、2013年6月、コンフェデレーションカップの初戦でブラジルに圧倒されたとき、このときも日本の悪い癖が出てしまいました。
こうザッケローニ監督は話したのですが、素人目には、日本代表が力を出し切れないほど、明らかな実力の差があったように思えました。自分たちのサッカーをするためには、自分たちの形でボールを持たなければ始まらないわけですが、日本は、そういう機会をほとんど作らせてもらえませんでした。
この「すべて出し切った」かどうかの見極めがとても難しいのだと思います。早過ぎれば、それは安易な諦めになり、何をやっても中途半端に終わってしまうということになりますし、遅れれば、後手を踏んでさらに泥沼に沈みこんでしまいます。
さて、本書の著者は、ザックジャパンの通訳という立場で、ザッケローニ監督が選手たちとコミュニケーションをとる場には必ず立ち会っていました。そこには、普通のマスコミを通しての報道では伺い知ることのできないザッケローニ監督や日本代表の素顔がありました。
その中で印象的だったのは、ザッケローニ監督が選手たちに寄せている信頼の言葉でした。特に、長谷部選手に対する信頼には一方ならぬものがありました。
長谷部選手が自分のキャプテンシーに疑問を抱いて、監督に相談した時、ザッケローニ監督はこう返したと言います。
これ以上の賞賛の言葉があるでしょうか。
そういった日本代表選手にまつわるエピソード以外で私が興味を抱いたのは、ザッケローニ監督の人となりを示す数々の言葉でした。
たとえば、監督就任しての第2戦2010年10月12日韓国戦を前にした移動バスの中で、著者にこう話したそうです。
また、2011年1月9日アジア杯第2戦シリアに2対1で勝利したとき。
勝ったからといって驕らない、相手をリスペクトした思いやりの心です。
そして最後、2010年1月のアジア杯で優勝したあと、イタリアに一時帰国するため成田に向かうため車中での監督の言葉はとても印象的です。
以前、同じく日本代表監督だったイビチャ・オシム氏を描いた「オシムの言葉」という本を読んで、その人柄に深く感銘を受けたことがあります。
本書で語られたアルベルト・ザッケローニ氏もまた、そうでした。
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