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汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師 (手嶋 龍一)
(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)
よく聞いているPodcastのバックナンバーの番組で紹介されていたので手に取ってみました。
著者の手嶋龍一さんはNHKの海外特派員としてよく知られていますが、その経験を活かしてインテリジェンス小説も書いているんですね。
本書は、サブタイトルに「インテリジェンス畸人伝」とあるように、フィクションではなく「人物評伝」です。
その人物の中には当然のことのように「リヒャルト・ゾルゲ」がいました。彼が活躍する第二次世界大戦期、極東でのインテリジェンスの実態を語ったくだりです。
(p191より引用) インテリジェンスとは、膨大な数のピースを気の遠くなるような忍耐力によってあるべき場所に配し、錯綜した事態から本質をあぶりだす業である。当時の日本の統帥部にはこうしたインテリジェンス感覚がすっぽりと欠けていた。翻ってクレムリンは情報の五感を研ぎ澄まし、「二〇世紀最高のスパイ」と言われたリヒャルト・ゾルゲを東京に潜ませ、極東情勢を分析していた。・・・クレムリンは、リシュコフ調書やノモンハンに関するゾルゲ報告を次々に受け取り、関東軍への備えを固めていった。砲火を交えない情報戦で、彼我の優劣はすでに決していたのである。
本書では、このゾルゲの他にジュリアン・アサンジやエドワード・スノーデンといった私たちと同時代の人物についても取り上げられていました。
ただ、書かれている内容は期待していたほどの密度ではなく、“さわりの紹介” 程度だったのが残念です。
こういったジャンルの場合、ノンフィクションもいいのですが、上質のフィクション作品(小説)の方がかえってリアリティが感じられたりします。
今度は、まだ手に取っていないジョン・ル・カレの定番作品も読んでみましょう。