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あなたの話は、なぜ伝わらないのか? (別所 栄吾)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 職場の課題で常に挙げられるのが、コミュニケーション・ギャップです。丁寧に話しているつもりでも、受け手によっては、かえって分かりづらくなることがありますね。

 本書は、相手に「伝わる話法」を紹介したものです。相手の理解を促す話し方の前段では、論理性すなわちロジカル・シンキングが必要ですから「伝えるための思考法」の勧めでもあります。

 ただ、内容はちょっと私には合いませんでした。
 ビジネス上での「説明」の方法論を細かく紹介しているのですが、「How To」に留まっており、その背景の掘り下げが不十分で物足りなさが残ります。

 たとえば、ナレッジマネジメントの思考フレームを紹介しているくだりで野中郁次郎氏の「SECIモデル」に触れていますが、この説明も非常にプアです。これでは、本書を読んだ人は知識経営の基本コンセプトとしての「SECIモデル」の本質を曲解してしまうでしょう。

 著者は、日本生産性本部でロジカルシンキングやプレゼンテーションの研修を長年ご担当されていたとのこと、そのためか、内容は「最大公約数的」です。企業であろうと官庁であろうと最低限共通して通用するであろう基本的な作法の指南ですね。
 具体例も数多く挙げていますが、今風のケースは少なく説明も冗長。ボリュームの割にはどうもピンときません。一昔前のTQC手法を講義されているような気分になりました。

 枝葉の記述ですが、強いてなるほどと思ったのは、“肯定文の効用”の指摘ぐらいですね。

(p157より引用) 「地震のときはエレベーターを使用してはいけません」という見慣れた表示も、否定文ではなく肯定文にすることで、相手への働きかけが強くなります。つまり、「地震のときは、(右手の)階段を使用してください」と表示してください。

 ただ、これも「肯定文」にすることが本質ではなく、後者の表示の方がより「具体的な取るべき行動」を明確に示しているという点が重要なのです。

 正直なところ、本書から新たな刺激や気づきを得るのは、ちょっと???かもしれませんね。



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