見なかった見なかった (内館 牧子)
(注:本稿は、2016年に初投稿したものの再録です)
変わったタイトルですが、脚本家・作家である内館牧子さんのエッセイ集です。
内館さんには、今はなき赤坂プリンスホテルで20年ほど前(注:今(2023年)からだと30年ほど前)にお目にかかったことがあります。ちょうど内館さんが脚本を手掛けたNHKの大河ドラマ「毛利元就」が放送されたころで、会社のイベントでの講演をお願いしたのですが、その折にご挨拶方々いろいろとお話を伺ったことが思い出されます。
その後は、特に横綱審議委員としての言動が注目されるようになりましたが、このエッセイ集でも、歯切れのいい舌鋒鋭い切り込みが随所に見られます。
その中から、強いてひとつだけとても印象に残ったくだりを書きとめておきます。
フリースタイルスキー・モーグル上村愛子選手。
自身3度目のオリンピックとなる2006年トリノオリンピックで5位入賞したとき、そのレース後の彼女のコメントを取り上げてこう内館さんは語っています。
その後、上村選手はさらに2度のオリンピックに出場しています。
2010年のバンクーバーオリンピックでは4位。その時は、
「何で、こんなに一段一段なんだろうと思いましたけど……」と語り、2014年のソチオリンピックでもやはり4位、悲願のメダル獲得には惜しくも届きませんでした。しかし、その時の言葉もいいですね。
まさに “記憶に残る選手” だと思います。
さて、本書、冒頭「変わったタイトル」と書きましたが、これは内館さん自身の発案とのこと、あとがきにこう綴っています。
しかし、内館さんの場合、気になったことを“やり過ごす”ことができるとは到底思えません。
今でもいつも自ら認めていらっしゃるように(好ましき?)“怒りキャラ”であり続けていらっしゃることでしょう。