マッキンゼー 世界の経済・政治・軍事を動かす巨大コンサルティング・ファームの秘密 (ダフ・マクドナルド)
(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)
ちょっと前に「マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書」という歯応えのない本を読みました。とはいえ、「マッキンゼー」という響きは、少なくとも私ぐらいの世代には一種独特な感覚を生起させます。
近年は、一部を除いて以前ほどコンサルティング・ファームが脚光を浴びているとは感じられませんが、やはり、未だに気になる業界ではあります。
本書は、マッキンゼーOBやその関係者に対する膨大なインタビューを通して、コンサルティング・ファームの雄である「マッキンゼー」の成り立ちとその実態を顕かにしようと試みた著作です。
1935年、マッキンゼーの創始者ジェームズ・マッキンゼーは、自らがコンサルティングしていた当時アメリカ中西部で最大の百貨店マーシャル・フィールドの会長兼CEOに就任しました。
まさにコンサルティング及びコンサルタントの現実の姿を痛感した故の真実の言葉でしょう。
本書では、そのほかにもコンサルティングの本質を突いた興味深い記述がいくつもあります。
たとえば、
簡単にいえば、どんな「戦略」が示されたとしても、結局は「実行」できるかどうか、その実行させるマネジメント力がないと無意味だということです。もっといえば、課題を抱えている企業はそもそも「実行力」の欠如が根本的な課題であり、これを解決しないとどんな立派な「戦略」を立てても無意味だということでしょう。
この点において、コンサルタントがどこまでクライアント企業に対して責任をもって貢献できるか、これがコンサルティング・ファームの根源価値だと思います。
次に、マッキンゼーに「ナレッジマネジメント(知識資産の共有)」の仕組みを導入したフレッド・グラックの言葉。
彼は、事務所の中には、スペシャリストとゼネラリストの双方が必要だと主張していました。その文脈の中で、こう語ったといいます。
これは、とんでもなくいい加減な言葉に聞こえますが、なかなかに含蓄のある台詞でもあります。個々のコンサルタントの限界を認識しつつも、なお、組織としての知の力を自らのビジネスの礎にしているのです。
個別業界・テーマに関する豊富なスペシャリストが組織内に存在しており、彼らの専門的な知見を縦横無尽に活用し尽くす仕組みがあるからこそ成立しうる主張ですね。
そしてもうひとつ、企業の経営層がコンサルティング会社を雇う大きな動機について触れているところを書き留めておきます。
1980年代終わりごろから顕著に出てきた動き、すなわち「ただ伝えるためだけに」マッキンゼーを雇い始めたというものです。
この効果は、明らかにマッキンゼーが他社に勝っているものでした。
さて、最後に書きとめておくのは、「エンロンの破綻」への関わりについてのマッキンゼートップの説明です。
スキャンダル発覚後、MDのラジャット・グプタはこう語ったと言います。
確かに、コンサルタントの助言を採るか否かの最終決定はクライアントの判断です。それはそうなのでしょうが・・・、何か事が起こるとこういう言を弄するようなところとは、私は、付き合いたいと思いませんね。