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破壊 ― 新旧激突時代を生き抜く生存戦略 (葉村 真樹)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。)

 新型コロナの影響でいつも行っている図書館が休館になったので、手を付けていなかった本を取り出してきました。

 著者葉村真樹さんによると、破壊的イノベーションで発展した企業、逆に破壊的イノベーションにより衰退を余儀なくされた企業、それぞれの営みを取り上げたとのことですが、やはり「成功事例」の紹介の方が圧倒的に多いですね。

 その中から、失敗をリカバーした企業がとったアクション事例をひとつ書き留めておきます。
 有名なマイクロソフトのケースです。

 マイクロソフトの再興隆の軌跡は、「自分が生き残るためには何をすべきか」ではなく「自分は世界に何をもたらすべきなのか」を考えた結果でした。

 パソコン時代、絶対OSのWindowsを擁し覇者として君臨したマイクロソフトは、スマホ時代にはその座をアップルやグーグルに取って代わられました。新たなスマホ用OSの登場に対し、ビル・ゲイツの後を継いだスティーブ・バルマーは、ノキアを買収しスマホへのWindows搭載(ウィンドウズフォンの提供)という戦略を選びました。
 しかし、その戦略は失敗。新たにCEOに就任したサティア・ナデラはイベントでこう語り、大きく戦略の舵を切ったのでした。

(p224より引用) 地球上のあらゆる場所にいる人や組織に、もっと多くのことができる力を提供すること。それが、私たちのキーワードだ。重要なのは我が社のテクノロジーではなく、我が社のテクノロジーによって他の人は何ができるかだ。

 ここに新しいマイクロソフトのバリュー・プロポジションが明示されました。

(p224より引用) ユーザーはウィンドウズというテクノロジープラットフォームのためにマイクロソフト製品を使うのではない、という基本に気づいたのである。ノキア羯末にウィンドウズOSを搭載して普及させるというスティーブ・バルマーが敷いた路線は、「いかに自分が生き残るか」を考えているに過ぎない。
 しかし、ユーザーがウィンドウズのOS製品を使っていたのは、そのOSの上で動く企業向けのテクノロジーソリューションである「オフィス」というアプリケーションを使うためだったのである。
 そこで、サティア・ナデラは「オフィス」アプリケーションを他社のスマートフォン0Sにも載せることで、ユーザーが使えるようにした。そして、「オフィス」に限らず、すべての製品をクラウドに乗せ、従来のライセンス契約から、サブスクリプションモデルへと移行することとなったのである。

 このマイクロソフトのエピソードは、著者が説く「3つの生存戦略(「人間中心に考える」「存在価値を見定める」「時空を制する」)」のひとつ “存在価値を見定める” の最も分かりやすい実例だと思います。



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