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ジャック・ウェルチの「私なら、こうする!」(ジャック・ウェルチ)
ウェルチ本としては、「わが経営」、「ウィニング勝利の経営」等を読んでいますが、その流れで本書も手にとってみました。
前書きにもあるように、本書は、講演で各所を回った際に受けた数々の「質問」がきっかけとなって執筆されたそうです。
さて、本書は(当然ですが、)ウェルチ氏による本なので、質問者に対する解決策として「解雇」や「転職」という答えが当たり前に登場します。
(p110より引用) 組織のコントロールが及ばない外部要因のせいで、迅速に経費削減をしなければならないときが必ずある。そういう場合にもっとも有効なのは解雇なのだ。
このあたり、さすがに今の日本では、(かなりの流動性は出て来たとはいえ、)まだまだそこまでの割り切りは難しいでしょう。
とはいえ、本書には、どんな国や業界でも適用できるウェルチ氏ならではの歯切れのいいアドバイスが満載です。
ウェルチ氏が思考や行動の基本においているものは、「自分」です。
たとえば、面接で成功を求めている質問者に対して、「大事なことは『自分』を出すことだ」とアドバイスしています。
(p23より引用) どんな面接でも、最大のセールスポイントは、“あなた自身であること”だ。だから、何かのふりをするのはやめて自分自身になりなさい。あなたが望んでいるプラスの印象は、あなたの内にある。それを外に出せばよいだけのことだ。
また、「コーチング」の成否についての質問に対しては、エグゼクティブ・コーチから耳に痛いアドバイスを聞いたあと、
(p74より引用) そのあとは、聞き手のあなたの問題だ。エグゼクティブ・コーチがきちんと役割を果たしたとして、その最終的な価値の大きさは、あなたの受容能力に応じて大きくもなれば、小さくもなるということだ。
と諭しています。
経営というシーンでは、定番のウェルチ氏の持論が登場します。
まずは、リーダーになった人へ送る言葉です。
(p149より引用) リーダーになるまえ、成功とは、自分自身を成長させることだった。・・・
リーダーになると、成功とは他人を成長させることになる。
(p166より引用) 信頼というのはつまるところ、そんな複雑なものではない。言葉と行動を通じて勝ちとっていくものだ-常に誠実であることで。
また、「改革」と「改善=ベスト・プラクティス」について。
(p206より引用) ベスト・プラクティスが真に機能しているカルチャーでは、目の色を変えて新たなアイデアを探し求めることが企業理念のなかに焼きつけられている。
そのほか、私の印象に残ったウェルチ氏の箴言です。
孫から進学・就職の相談を受けた人に対してのアドバイス。
(p234より引用) お孫さんたちに、次の時代に伸びると予想される分野は何かをぜひ話してあげてほしい。だが、大好きなことをやるべきだよと、もっと強く話してほしい。
そして、ウェルチ氏のいう「勝者」について。
(p240より引用) 世界で最高の勝者は誰かといえば、「私は自分の選んだ人生を送っているだろうか」の問いに対して、イエスと答えられる人たちだ。
ウェルチ氏の本としては極めて軽い読み物で、この本だけでも結構楽しめます。ただ、できれば、「わが経営」あたりを読んでからの方が面白味は格段に増すように思います。