レバレッジ・リーディング (本田 直之)
ビジネスに活かす「投資」としての「読書」の薦めです。そのための「多読」のノウハウを開陳した本です。
私の読書の動機とは全く異なるので、私自身は、この本で示されている「多読法」を実際やってみようとは思いませんが、読書の目的が著者と一致するのであれば、十分参考になる内容でしょう。
まずは、著者の薦める「多読の意義」についてです。
(p47より引用) 意識して自分に新しい刺激を与え続けないと、自分のやり方に固執したり、視野が狭くなったりしてしまいます。特に年齢を重ね、ある程度成功体験を積むと、ますます自分のやり方にしがみつき、新しいものを受け入れない傾向が強くなるようです。人間はその時点で成長が止まってしまいます。柔軟な精神を維持し、新しい知識や考え方を吸収し続けるためにも、多読を習慣にすべきだと思います。
このあたりの指摘は至極真っ当な考え方ですね。
さらに、著者はこう続けます。
(p48より引用) 多読には、考えの偏りを防ぐ効果もあります。・・・一冊のみを読んで、この著者の意見がすべてだと思い込んでしまう危険を避けるために、多読をするのです。
著者は、ビジネス関連書を読むことは、ビジネスで成功するための「投資」だと割り切っています。
投資ですから失敗は可能な限り避けなくてはなりません。多くの本を読むことは、いろいろな考えに触れることですから、それだけリスクの極小化や分散につながります。
また、当然、投資効率も高めなくてはなりません。そのためには、「合目的的」で「無駄を省いた」読み方が求められます。
(p48より引用) 多読はふつうの読み方と違い、すべてを読まず、必要なところ、自分にとって役に立つところだけを選び取る読み方です。つまり、非常に読み手の主体性を重んじる読み方です。常に目的意識を持って、「この本から何を吸収したいのか」を意識し続けます。ときには著者の考え方に疑いを持つこともあります。
この考え方は、著者の読書の目的に照らしてみると首肯できる内容です。
(p48より引用) 大量の情報を取り入れつつ、主体的に取捨選択するということは、それだけ判断能力が養われることでもあります。多読術を続けるうちに、主体的な思考力がつくことは間違いありません。
繰り返しになりますが、本書は「投資」としての「読書術」を紹介したものです。世の中に溢れんばかりのビジネス関連書から、成功に導くエッセンスのみを効率的に抽出する方法を具体的に示しています。
読み終えてみると、本書で薦める読書術は、今の時代のビジネス関連書の「実態」に結構フィットしているような気もしてきました。
ただ、この本、特に前半部分はかなり冗長です。著者の薦める80対20の法則に従って読み飛ばせばいい部分がかなりあります。
本書自体が、著者が説く「『多読』のための読書術」を実践する好材料を提供しているようです。