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夜叉ヶ池・天守物語 (泉 鏡花)

 教科書にも出てくる作家の作品を実はあまり読んだことがない・・・、その反省から先般も島崎藤村の「夜明け前」を読んでみたのですが、本書はその流れです。

 今回は「泉鏡花」の短編戯曲
 妖怪と人間との絡み合い、鏡花の描く世界の中では人間界の方が不可解、魔界の方が純粋なようです。

 ストーリーものなので、過度な引用は避けますが、「天守物語」より1カ所、そういった人間界のしがらみや思いあがりに触れたくだりです。
 ちなみに、台詞の主の「夫人」富姫は妖怪です。

(p114より引用) 鷹は第一、誰のものだと思います。鷹には鷹の世界がある。露霜の清い林、朝嵐夕風の爽かな空があります。決して人間の持ちものではありません。諸侯なんどというものが、思上った行過ぎな、あの、鷹を、唯一人じめに自分のものと、つけ上りがしています。貴方はそうは思いませんか。

 典型的な食わず嫌いで近代文学はほとんど読んだことがありません。特に「戯曲」を手に取ったのは初めてでした。が、本作品、軽いインパクトを受けました。

 今までは戯曲といえば、定番のシェイクスピアの翻訳本をいくつか読んだぐらいだったのですが、この鏡花の作品は予想外に興味深いものでしたね。
 特に「天守物語」は、最後の幕の急展開も面白く、この作品が「舞台」ではどう演じられたのか、一度みてみたいという思いを強く持ちました。

 ちなみに「夜叉ヶ池」は、1979年に映画化されたとのこと。主演 坂東玉三郎、監督 篠田正浩、音楽 冨田勲という錚々たる顔ぶれです。
 また、「天守物語」は1995年、坂東玉三郎 監督・主演、その他、宮沢りえ・宍戸開・南美江・市川左團次といったキャストで映画となり、こちらはDVDも販売されているようです。ちょっと気になります。



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