(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)
著者の山極寿一さんの著作は今までも何冊か読んでいるのですが、この本はミーハーながらタイトルに惹かれて手に取ったものです。
ただ、内容は、私が勝手に想像していたものとはかなり違っていました。
書かれたのは、山極さんがまだ京都大学総長だったころ。
山極さんのこれまでの研究生活の実体験から紡ぎ出された「人間関係形成のヒント」がストレートな人柄そのままに開陳されているのですが、いろいろと気づかされる点が多く、期待どおりの楽しい読み物でした。
まずは「前書き」で山極さんのメッセージが明確に提示されています。
タイトルには「勉強法」とありますが、本書が目指す勉強のゴールはどうやらいわゆる「勉学の成果」とは全く別物のようです。
ひとつのゴールは、前書きでも示されているように「対人力」を身に付けることであり、より具体的なイメージは、
この「信頼」という点について、野生のゴリラと生活した山極さんのアフリカでの経験はとても大切な気づきを与えてくれました。
時間をかけて理解し合い、双方で歩み寄る、その積み重ねでようやく「信頼関係」が築けるというのは、そのとおりですね。
と山極さんは語ります。私も「直接会うに如くはなし」だと思います。
そして、最後に綴られているのが、山極さんからの暖かなエール。
いいですね、学生さんに限らず、どんな人をも元気づける言葉です。年齢も関係ありません。
あと、蛇足になりますが、私の印象に残ったちょっとトーンの違う山極さんのコメントを書き留めておきましょう。
昨今の文部科学省による「大学改革?」への山極さんの真っ当な反論です。
つい最近も「“稼げる大学” へ外部の知恵導入」とかと言い始めているようですが、政府の “学問の場” の意義に対する無知には、理解しがたいものがあります。
やろうとしていることも、到底、正気の沙汰とは思えません。