(注:本稿は、2012年に初投稿したものの再録です)
Think Different
以前読んだ「スティーブ・ジョブズⅠ」に続くジョブズ伝の後半です。
1997年1月、ジョブズがアップルに戻ってきました。非公式・非常勤のアドバイザーという立場です。
スカリー、スピンドラーに続き、当時のCEOはギル・アメリオ。彼はジョブズのファンではありませんでした。ジョブズはアメリオを退散させます。その際にも、例のジョブズの人間性が顔を出します。
ジョブズのアップル建て直しのポイントは「製品」でした。そしてまた、アップルという「ブランド」の再構築でもありました。
「シンク・ディファレント」。
新たなプロモーションのキャッチコピーです。その心は、こういった印象的なメッセージとともに拡散されました。
アップルのブランド力は強烈です。私自身の経験でもありますが、10数年前、PCがwindows版に塗り込められているころ、やはりMacユーザには強いこだわりと独特のポリシーを感じましたね。
まさにこれは「ライフスタイルブランド」とも言うべきものです。
このブランドは「製品」のデザインという媒体で顧客に具現化されます。ジョブズはデザインにこだわり抜きました。
このデザインに関するジョブズのパートナーはジョニー・アイブ。彼のデザインスタジオは、ジョブズにとっては、デザイン作り以上の意味がありました。ジョニーの言葉です。
「集中」「知り捨て」「シンプル」・・・、ジョブズは、俯瞰的な視点から極めて明確な方向性を示していきました。
WALKMANを超えて
ジョブズが返り咲き、新たな未来を見据えたアップルは、コンピュータをコアにした音楽生態系ビジネスに乗り出していきます。
その過程は、しばしばソニーと比較されます。本書でも、そのあたりの様子については詳しく語られています。
ここで登場するイオヴァインはユニバーサル傘下のレーベルのキーマンです。
アップルとソニーとは、そもそもビジネススタイルが全く異なっていました。正確には、創業時とは異なる「当時の」ソニーとはといったほうがいいかもしれません。
「競合に対抗するには、自ら競合を生み出すこと」、意識的な自己淘汰は、マーケットをリードし続けるための一つのセオリーですが、多くの企業では、ここに「成功体験の壁」が立ちはだかります。
この壁を乗り越えるには、適切なタイミングで過去を切り捨てる英断が必要になります。成功している部門が自らの手でその決断を下すのは極めて難しいでしょう。ここにおいて、強烈なリーダシップの有無が、企業の盛衰の明暗を分ける分水嶺になるのです。
個性的なリーダ・・・、逆説的な言い方になりますが、それらの人々の中では不思議なほど似通った共通項が見られます。
ジョブズはこう語っていますが、これはまさに本田宗一郎氏の言葉と全く同じです。そして、ジョブズはそれを見事に成し遂げました。プロダクトだけでなく、新たなライフスタイルをも先導し創造したのでした。
すでに病に侵されてしたジョブズがトルコを旅行していたとき、こう閃いたのだそうです。
ジョブズは、「ジョブズ・ウェイ」を貫き通しました。