宮本常一が撮った昭和の情景 上巻/下巻 (宮本常一)
宮本常一氏の著作は、以前「忘れられた日本人」を読んだことがあります。
本書は、昭和30年から55年の間に宮本氏が日本全国を巡って撮った約10万枚の写真の中から選ばれたものを、各年ごとに上下2巻にわたってまとめたものです。
上巻巻末の田村善次郎氏の解説にあった、宮本氏のフィールドワークの基本姿勢についての紹介です。
本書に採録されている写真は、もちろん興味深いものばかりです。
狭い国土を、その土地土地の気候風土に合わせて工夫し尽くした風景、海岸にまで迫る広島県呉市横島の段々畑や、珍しい香川県直島の枝条架式塩田・・・は、おそらく今はもう見られないでしょう。
本書の楽しみは、それら貴重な写真に止まりません。数々の写真に添えられている宮本氏の著作からの引用が、その時代々々の空気を伝えています。
たとえば、北海道利尻郡(利尻島)の昭和39年の街並みは、宮本氏にはこう映っていました。
また、福島県二本松市小浜の縁側のある民家の写真には、こう付されています。
まさに、その後の日本からは「縁」が消えていったのでした。
私が生まれたのは昭和30年代半ばなので、同時代としての記憶にあるのは下巻(昭和40年~55年)の風景です。
何枚かの写真に顔を出す雑種犬の姿に懐かしさを感じます。私の家の近所にも「アカ」という犬がいました。
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