(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)
ちょっと前に、同じ小佐田定雄さんによる「米朝らくごの舞台裏」を読んだのですが、さすがに落語作家だけあって噺の機微にも精通しているうえに、米朝師匠とも親しかった小佐田さんの解説はとても興味深いものがありました。
ということで、今度は私の大好きな噺家さん「二代目桂枝雀」師匠をとりあげた著作を読んでみたということです。
こちらの本でも、枝雀師匠の座付作者でもあった小佐田さんならではのとっておきの話が満載でしたが、そのいくつかを覚えとして書き留めておきます。
まずは、いかにも枝雀師匠らしい “芸談”。
「芸が高座の上で完結してしまう」とか「(客席に)芸が行きわたる」とか、なんとも枝雀師匠らしい言い回しですね。
もうひとつ “芸談” といえば、「宿屋仇」にまつわる米朝師匠との絡みの思い出。
枝雀さんですら感じる、名人・上手それぞれの目指すべきところの違いです。
エピソードといえば、弟弟子の桂ざこば(朝丸)さんとの思い出話も枝雀さんの優しさに溢れたものでした。
お二人はとても仲の良い兄弟弟子だったそうです。小米・朝丸時代のこと、ある日、雨の中、捨てられていた仔犬を可哀そうに思い牛乳を買いに走った朝丸さんをみた枝雀さん。
こういう純真さが、決して忘れられない枝雀さんの人としての魅力であり真髄です。