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変化の時代、変わる力 ― 続・経営思考の「補助線」 (御立 尚資)

 かなり前ですが、御立尚資氏による前著「経営思考の「補助線」」も読んでいます。
 本書も前著と同じく、日経ビジネスオンラインの著者の連載コラムをもとに加筆・修正したものです。

 テーマは「変化」と「適応力」
 いくつもの参考になる指摘が見受けられましたが、その中から2・3、覚えに書き留めておきます。

 まずは、変化に対応するための「シナリオプラニング」に関するところから。
 シナリオプラニングについては、重要性は認めつつも、その実効については懐疑的な意見も寄せられています。その多くは、「シナリオ」そのものの「非科学性」に対するものです。この点について、著者はこう捉えています。

(p35より引用) 誤解を恐れずに言えば、シナリオは、科学的に、あるいは正確に将来を予測するということに価値があるのではない。その点で見れば、必ず「不完全」なものでしかない。それでも読む努力、結果を共有する努力、シナリオに応じて素早く対応できる仕組みを作っておく努力をするかしないかで、企業の生存可能性に大きな差が出るということのほうが、よほど重要であり、そのステップまで含めて、価値が出てくる類のものなのだ。

 策定するシナリオが、科学的・確率論的に精緻なものであることはそもそも無理だ、むしろ、想像力を働かせ、将来の世界観を「イメージ」や「ストーリー」で語るレベルでよいというのです。
 シナリオの精緻さを追及するよりも、それを踏まえた適応力をつけることの方が、現実的な変化への柔軟な対応を可能にするという考えです。

 次は、著者がアフリカの難民キャンプやスラムで聞いた「教育への希望」の声について。
 ケニアで回った食糧援助の現場3ヶ所で、著者は「食料以外にどのような援助を期待しますか」と問いかけました。その質問に対する彼らの答えです。

(p86より引用) 難民キャンプでは、次のような答えが返ってきた。
「自分たちの国は、自分たちの世代ではきっと復興に至らないだろう。ただ、ここにいる子供たち、ここでこれから生まれてくる子供たちの世代が、平和になった国に帰れるようになった際に、ソマリアの復興の役に立ち、かつ暮らし向きの良い生活ができるようにしたい」
「ついては、難民キャンプの中での初等教育だけでは不足なので、中学、高校を作る、あるいは外の学校に優秀な子だけでも行けるように奨学金制度を作る、といったことを、是非お願いしたい」

 また、干ばつで家畜を失った遊牧民はこう語ったといいます。

(p86より引用) 「・・・仮住まいの定住地ではあるが、何とか、小学校教育を提供してもらえるよう助けてもらえないか」

 こういった極限の生活環境にあるアフリカの人々の切なる願望を、今の日本の教育現場や生徒・学生はどう感じるのか、大学生・高校生の子どもをもつ私自身(注:2012年当時)としても大いに考えさせられるところがありますね。

 最後に、第一次南極越冬隊隊長だった西堀榮三郎氏の「変化に対応するための姿勢」についての言葉をご紹介しておきます。

(p286より引用) -雨の日には晴れの、晴れの日には雨の準備をする、という変化への備えを行い、
-「取り越し苦労をしない主義」で、何が起こっても、創意工夫で解決できるという信念を持ち、
-最終的には、(十分な準備をした上で、運を信じ)「楽観主義」に立つ。

 最初というのは何が起こるか全く分からない。その極限経験から西堀氏は「虚心坦懐に物事を見つめ、日々変化に目を凝らし、課題は解決できるものという信念でソリューションを考える」という態度を会得したのでした。



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