嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか (鈴木 忠平)
(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)
気になっていた本ですが、いつもの図書館の新着書リストで見つけたので早速予約して読んでみました。
主人公落合博満さん、現役時代も監督時代もリアルタイムで知っていますが、当時からそのユニークなキャラクタには大きな興味と少しの共感を抱いていました。
本書は、担当記者だった鈴木忠平さんが、8年間にわたり中日ドラゴンズ監督を務めた落合さんの実像を描こうと試みたノンフィクション作品です。
本の作りは、落合さんとの関わりを通して大きな影響を受けた川崎憲次郎、森野将彦、福留孝介、宇野勝、岡本真也、中田宗男、吉見一起、和田一浩、小林正人、井手峻、トニ・ブランコ、荒木雅博の12人の方々の名前をタイトルにした章を立てて、彼らの証言や彼らにまつわるエピソードを通して落合さんの多面的な実像が顕かにされていくという仕掛けです。もちろん、著者が記者として落合さんへ直接取材して聞き知った特別なネタもしっかりと盛り込まれています。
その中から、いくつか私の興味を惹いたところを書き留めておきます。
まずは、落合監督の「投手起用」について。
ピッチャーのことは森繫和ピッチングコーチに任せていたとのことですが、ここまで徹底していたとは驚きです。
そして、落合監督が選手時代から群れなかった理由。
和田選手が落合監督からの打撃指導で腑に落ちたことでした。
最後に、私が最も印象に残ったくだり。
遠征先のナイター終了後、宿泊ホテルの食堂に一人向かった荒木選手は落合監督と会話を交わしました。
確かに、落合監督の生き様は、自問自答しつつも “自らの信念” “自ら拠って立つ価値観” に正直だったということです。
そして本書は、“落合監督の実像を追った硬質のドキュメンタリー” であると同時に、“著者鈴木忠平さんの記者としての成長を綴った自叙伝” でもありました。