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銀座の達人たち (早瀬 圭一)

(注:今から10年以上前の投稿の再録です)

 先日、ちょっとした買物があって昼間、久しぶりに銀座を歩きました。会社から7~8分も歩けば中央通りに出ます。

 明治初期、銀座は今の風情の礎を築くことになります。幾く筋かの通りで整形されたシンボリックな街区が誕生しました。

(p162より引用) 大火を機に政府は、海外とつながる横浜‐新橋間を当時の日本経済の中心であった日本橋と結ぶことを考えたらしい。その「渡り廊下」として銀座を位置づけていた。文明開化の象徴のような煉瓦づくりの新しい街は、そんな背景があってつくられている。

 最近の銀座の変容には目を見張るものがあります。私は、ファッション系には全く疎くまた関心もないのですが、奇抜な外観の有名ブランドショップはやはり目に入ります。

 こういった状況を、銀座の老舗の主人たちはさまざまな心持ちで観ています。
 たとえば、壹番館洋服店店主渡邊明治氏が思う「銀座のふところ」についてのくだりです。

(p105より引用) このところブランドショップの進出ラッシュが続き、街の風景が一変した。一昔前なら考えられないような店も出店している。ルール違反が多い、と「三亀」のオヤジが嘆くのも当然である。しかし、銀座はふところの深い街だ。いろんなものを抱え込むが、時間が経つと淘汰されて合わないものは出ていく。何十年も続くものはこの街に必要なものなのだ。銀座にはある種の「品格」がある。それが長年かかって築きあげた伝統だと渡邊は思っている。

 当然ではありますが、本書で紹介されている老舗には、ビシッと一本通った本物の気概が強く感じられます。それは、家業の重みでもあり、伝統の誇りでもあります。

 このところ外資系に圧されているホテル界の老舗「帝国ホテル」もまだまだ捨てたものではありません。
「サービスとはなにか」「マナーとはどうあるべきか」、歴代の「ミスター帝国ホテル」が、そういうホテルマンの基本を真摯に問い続けます。

(p334より引用) 百十周年を機に「帝国ホテル行動基準」がつくられた。「挨拶」「清潔」「身だしなみ」「感謝」「気配り」「謙虚」「知識」「創意」「挑戦」の九つからなっている。
 このキーワードを折りたたみのカードに記し、全従業員が常に携帯している。基本的なことばかりだが、全て実行出来ているか、となると誰しも胸に手を当てることになる。・・・
「さすが帝国ホテル」
「帝国ホテルともあろうものが」
帝国ホテルに対する客の評価は、究極のところこのどちらかである。これ以外はない。

 本書で紹介されている老舗。一度は訪れてみたい気がします。
 ライオン銀座7丁目店なら、行く気になればすぐにでも行けますね。
 持物にも全くこだわりのない私ですら、銀座タニザワの鞄は気になります。


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