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アルハンブラ物語 (W・アービング)
著者のワシントン・アービングは1783年ニューヨークに生れました。
本書は、1826年在スペインアメリカ公使館書記官としての約3年間のスペイン生活の間に記した紀行文のひとつです。
物語の舞台はアルハンブラ。ご存知のとおり、スペイン南部アンダルシア地方のグラナダにあるイスラム王朝ナスル朝の宮殿です。
アービングは、幼いころからアルハンブラには憧れを感じていたようです。
(p66より引用) アルハンブラは私が少年の頃からのあこがれの世界で、宮殿の名はどれほど私の夢をふるいたたせてくれたことだろう。私はハドソン河の岸辺にねそべって、時がたつのも忘れてグラナダの戦いや、古いスペインの物語の本を読んだものだ。
その夢が実現されてグラナダを訪れ、幸運にもアルハンブラ宮殿の一室に滞在して書き上げたエッセイがこの「THE ALHAMBRA(アルハンブラ物語)」です。
本書は、アルハンブラでの暮らしの中での体験・まわりの人々との交流を綴った随想と、アルハンブラにまつわる伝承・昔話の紹介との2つのコンテンツで構成されています。
当時のアンダルシア地方の人々の気質や暮らしぶりが垣間見られる随想部分も楽しいのですが、アルハンブラ宮殿を舞台とした昔話の数々はさらに秀逸です。
アルハンブラはイベリア半島におけるイスラム王朝の宮殿として作られましたが、イスラムがキリスト教国に駆逐されその栄華に終止符をうちました。その波乱に富んだ歴史は、数々の昔話の格好の題材になったのでした。
本書を読んで、アルハンブラを訪れる旅行者も多いそうです。
私も、(本書を読んでではないのですが、)35年ほど前、旅行でアルハンブラを訪れたことがあります。
異国情緒漂うイスラム風建築の宮殿ももちろん印象に残っていますが、宮殿の丘のふもと、グラナダの街の風情もそれに劣らず興味深いものでした。狭い路地を歩くと中庭のあるイスラム風の家屋を目にすることができました。小さなお店でスペインの絵皿を買ったことも思い出します。
このあたりは、「グラナダのアルハンブラ宮殿 ヘネラリーフェ離宮 アルバイシン地区」として世界遺産にも登録されています。私が、歩き回ったのはそのアルバイシン地区だったようです。