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ウクライナ・ダイアリー 不屈の民の記録 (古川 英治)

(注:本稿は、2024年に初投稿したものの再録です。)

 いつも聴いているピーター・バラカンさんのpodcast番組に著者の古川英治さんがゲスト出演していて紹介された著作です。

 古川さんは日本経済新聞モスクワ特派員の経験もあるジャーナリストです。
 今も続くウクライナへのロシア侵攻開始時には、まさにウクライナ人である奥様とキーウに在住。その後も現地での取材活動を通して、「自由」を堅守しようと戦うウクライナの人々の現実の姿を伝え続けています。

 本書に記されている迫真のエピソードの数々はどれも心に刺さるものだったのですが、それらの中から特に印象に残ったところをいくつか書き留めておきましょう。

 ロシア侵攻時に古川さんが直面した最大の悩みは「キーウから避難しようとしない妻の強い決意」でした。しかし、これは古川さんの奥さんだけの特異な考え方ではありませんでした。
 防空シェルター内での古川さんと現地の方との会話です。

(p36より引用) 「みなさんは西部や外国に退避することは考えていないのですか」
 すると14年にロシアが侵攻した東部ドンバス地方からキーウに移住したという女性が、みなを代表するように答えた。
「もうどこにも逃げない。ここが私の祖国なのだから」
  みな、うなずいていた。

 そして、侵攻開始後2年が経っても、ロシアの軍事行動は続きます。
 直接的な都市への攻撃は、ブチャのように制圧した都市住民への抑圧(ジェノサイド)をもたらしていますし、基幹インフラ施設の破壊は、ウクライナに残る人々の生活基盤に壊滅的な影響を及ぼしています。

 2022年11月26日、キーウで催された「ホロドモール犠牲者追悼式」に母親とともに参加した14歳の娘ソフィアは、古川さんにこう語りました。

(p255より引用) 「また同じことが起きています。ロシアは子供や幼齢者も構わず殺している。いまは発電施設を破壊していて、今度はウクライナ人を凍え死にさせようとしているのかもしれません・・・キーウもしょっちゅう停電になっているけど、電気も暖房も水もない地域があって、私たちよりももっと大変な目にあっている人々がいます

 今、2024年2月、侵攻開始から丸2年が過ぎました。直近の報道によると、物量に勝るロシアが攻勢との戦況のようです。

 本書で古川さんが伝えるウクライナの現実を思うと、ウクライナの人々の「自分たちの自由を守り抜こうという強い決意」が、何とか一日も早く報われることを心底願います。
 まずは “停戦” という形でいいので。

(注)2024年10月、本投稿を採録している現時点でもウクライナの惨状は続いています。



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