「ヒトラーに屈しなかった将軍」という副題に惹かれて読んでみました。
主人公は、ドイツ陸軍最高司令官クルト・フォン・ハマーシュタイン=エクヴォルト将軍です。「利口で怠け者、戦争嫌い」といわれるハマーシュタインの将軍ですが、こういう人物評もありました。
ハマーシュタイン将軍のエピソードとして興味深かったのは、「部下の将校」の4分類でした。
この中で面白いのが、「利口で怠け者」というタイプの適性のところですね。「トップのリーダー」としての素養としては目新しいものです。そして、まさにハマーシュタイン自身がそう評されていたのです。
ハマーシュタインは、ヒトラーが政権を取らんとしたときのドイツ陸軍最高司令官でした。
このときのハマーシュタインの誤算が、結果的には、後の世界史に大きな影響を与えたのでした。
ヒトラーの台頭は、当時のドイツ軍幹部の無理解がその後押しをしていたようです。たとえば、1934年6月30日、SS(親衛隊)の虐殺行動に対する将軍たちの反応です。
本書を執筆した意図を、著者はこう語っています。
ただ、正直なところ、著者の意図の実現は、こと私に対しては十分には満たされなかったようです。
まさに、ハマーシュタインとその家族のひとつひとつのエピソードが、モノクロの写真のように無機質に示されていくのですが、ストーリーとしての連続性がうすいので、どうも今ひとつ理解しづらかったというのが実感です。