この国のかたち〈6〉1996 (司馬 遼太郎)
会社の方のお勧めということで読んでみました。
月刊文藝春秋に発表された数編のエッセイを軸に、氏の随想集からの作品や「歴史のなかの海軍」という未刊行作品が併録されています。
今までも司馬遼太郎氏の作品は、小説・エッセイと数々読んできました。特に大ファンというわけではありませんが、読めば必ず「新たな視点」に気づかされます。
特に歴史の流れを、独特の切り口でザクッとつかんで意味づけする、こういう大局観は見習いたいのですが、(当然ではありますが)全く足元にも及びません。
まず私の興味を惹いたのは、「言語についての感想」というエッセイでの一節です。
鎌倉時代は「武家」の時代と言われますが、「公家」の視座からみた武士の位置づけは普通の歴史観からはなかなか聞かれません。
こういう視座の転換は、(タイプは異なりますが、)網野善彦氏の歴史学にも見られるもので、非常に興味深いものがあります。
また、「原形について」というエッセイの冒頭では、こういう独特の言い回しがみられました。
「高貴な甘さ」というのは、いかにも相応しいことばです。また、こういう人と人との関係における不確実性を「たのしさ」と捉えるのも流石の感性だと思います。