ヘルマン・ヘッセ(Hermann Hesse 1877~1962)。1946年にはノーベル文学賞も受賞した有名なドイツの詩人・作家です。
とはいえ実を言うと、「車輪の下」「ガラス玉遊戯」等の作品名は知っていても、恥ずかしながら私はヘッセの著作を通読したことがありません。
以前から気になる作家の一人だったのですが、今回は、興味深いタイトルに惹かれて手にとってみました。内容は、ヘッセのエッセイ・書簡・詩文等で構成されています。
「わがまま」とタイトルにもあるように、ヘッセは「自己の考え」をとても大事にしました。その姿勢は、本書の中でいろいろな文芸スタイルを通して顕れています。
ヘッセは、14歳から15歳にかけての3ヶ月間、シュテッテンの精神病院に入れられたことがあるとのこと。そのとき、両親に対して書いた手紙の一節です。
親から、他者から、自分対して向けられた決定に対する一人の「人間」としての反抗の意志表明です。15歳にして、すでに非常に鋭く激しい筆致です。
また、ヘッセが50歳を過ぎた1932年12月の書簡の中には、こういうくだりがあります。
この「自己」に重きを置く考えは、自己を取り巻く環境である「現実」に対する無関心さにも繋がっていきます。それは、ヘッセ自身も自覚しているところでした。
ヘッセは1919年執筆の「ツァラトゥストラの再来」という作品の中で、若者に対しても「自己の心に従う」ことを訴えています。
自己の心に従う者たち、独自の生き方をする者たちは、人類に対して大きな使命を担っているのだとヘッセは考えています。
ヘッセの晩年、1961年7月の書簡の一節です。
幼い頃から一生涯、その間ドイツに取って非常に大きな社会的苦難であった二度の世界大戦を経ても、ヘッセの信念は不変でした。