蜘蛛の糸・杜子春 (芥川 龍之介)
(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)
混んでいる通勤電車の中で読むための文庫本が切れたので、いつも行く図書館で借りてきました。本当に久しぶりの芥川龍之介です。
おそらく遥か以前、ひょっとすると30年から40年前に一度は読んだことのある作品が大半だと思います。が、細部に渡って記憶に残っているかというと、「蜘蛛の糸」や「杜子春」ですら危なっかしかったですね。
改めて読んでみると、それぞれの作品の書き出しのシンプルさが印象的です。
たとえば、「蜜柑」では、
「魔術」では、
「杜子春」では、
「アグニの神」では、
「白」では、
また、特に、「蜘蛛の糸」の書き出しと結びに見られるシンメトリー的な対比は面白いですね。
始まりは、
そして、おしまいは、
また、お釈迦様を描く穏やかな筆致と、それに挟まった地獄での犍陀多の描写とのコントラストも見事です。
さて、本書を読み終わっての感想です。
多くの作品は、人間の弱さとともに人間の優しさも描かれています。芥川自身、年少者が読むことも大いに意識した作品群なので、読み終わっても妙な心のしこりが残らないのがいいですね。「猿蟹合戦」を除いては・・・。