だれかを犠牲にする経済は、もういらない (原 丈人・金児 昭)
原丈人氏の著作も金児昭氏の著作も以前読んだことがありますが、とても真っ当な論調であった印象が残っています。
本書は、そのお二人による「資本主義のあり方」に関する対談を起こしたものです。第一印象としては、今のキャリアに至る道程がかなり違うので、どんな対談になるのかと思いましたが、内容はなかなか興味深いものでした。
タイトルにもあるように、お二人とも今の金融経済状況に大きな危機感をいだいています。
こう語る原氏の主張は極めてクリアです。目指すのは「公益資本主義」、それはアメリカ型の金融資本主義の否定から始まります。
先の世界的な金融危機は、リスクマネジメント不在の金融工学が生み出した新手の金融商品の取引によるものでした。
そこには金融取引で儲けようとする多くの投資銀行やファンドの存在がありました。彼らはありとあらゆる方法で形振り構わず利益を求めます。
だとすると、問題は、「しからばどうするか」ということになります。
企業の内部統制に係るSO法にしろ新たな国際会計基準IFRSにしろ、少なくとも欧米で上場していたり欧米と取引があったりする企業は否が応でも従わざるを得ないでしょう。
そもそものルール作りの場で影響力を発揮するにはどうすればいいか、それを真剣に考える必要があるということです。
さて、本書のもうひとつの楽しみは、こうした新たな資本主義を目指した議論の合間で語られるお二人の「考え方」「姿勢」に触れたくだりです。
その中でも特に印象に残ったのが、金子氏のいう「あきらめる力」についてのお話です。
謙虚な語り口ではありますが、直面したすべてのことに一生懸命全力を尽くされてきたうえでの達観だと思います。
誰もが軽々に語ることができるものではありません。
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