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一瞬で心をつかむ文章術 (石田 章洋)

(注:本稿は、2016年に初投稿したものの再録です)

 レビュープラス(当時)というブックレビューサイトから献本していただいたので読んでみました。

 タイトルどおり「文章の書き方」のHow to本ですが、表現のテクニック等に特化した内容ではありません。
 文章は自分の考えや主張を “伝える” ためのものですから、その目的を達成するための文章を書くには、 “伝える” 客体である「考え」や「主張」の明確化や、納得させるための論理構成、具体的な理由・根拠の整理が必要になります。
 そういった点についても、著者なりの実務体験に即したノウハウが紹介されています。

 そのひとつが「箱書き」というやり方。
 これは、テーマごとの「箱」を作り、その箱に集めた材料をくくりつけていく情報整理法です。具体的には著者はホワイトボードと付箋紙を使っていたそうです。

(p68より引用) 整理した材料を付箋に書き出し、「しっくりくる」順番に並び替えていくだけで、ざっくりとした全体の流れを作ることができる

 そして、次はワープロソフトのアウトライン機能の登場です。

(p70より引用) 箱書きでざっくりした流れを作ったら、アウトラインで階層化していきます。・・・
 このアウトラインを最初に作り上げることが、長文の文章を早く書き上げるためのポイントです。

 こういった方法は、著者に言われるまでもなく多くの人が似たようなやり方で実行していると思います。ポイントは、流れの「幹」をしっかり作り、そこに材料を論理立てて並べていくということですね。

 こういった文章作りのプロセスは昔からの王道・常道だったわけですが、ワープロソフトが普及してからは、圧倒的に柔軟かつ効率的にできるようになりました。「手書きで下書きして推敲したものを清書」、もうそういった世界には戻れませんね。

 さて、あっという間に読める本書を通読しての感想ですが、正直なところ、著者が自分が得意としていること・伝えたいことをテーマにした著作だという印象を抱きました。

(p186より引用) 書くための時間は、毎日の睡眠時間や食事時間と同様、24時間のどこかに、かならず「とっておく」ものです。・・・
 平日仕事をしている人なら、朝2時間早起きして執筆時間にあてる。あるいは夜の9時から11時でもいいです。

と書かれていますが、普通の人の場合、これほどまでして文章を書かなくてはならないというシチュエーションはあまり思いつきません。
 通常の生活においては、それなりの長さの文章を書く機会はかなり稀になっていますから、本書が説く「文章術」が力を発揮する場面はそれほどないでしょう。

 ビジネスシーンでも、言いたいこと・伝えたいことをコンパクトにまとめた「メール」「プレゼンテーション資料」等が主流ですから、「それなりのボリュームの文章を書く」という仕事も激減しています。

 とはいえ、メール・プレゼンテーション資料の場合は、限られたボリュームの中でより明確に言いたいことを伝えなくてはならないわけですから、本書で紹介されている、「ネタ集め」や「組み立て方」等のノウハウは十分参考になるでしょう。
 ただ、それにしても本書での著者からのアドバイスに、なるほど目から鱗だといった「強烈なインパクト」を感じなかったのは残念です・・・。



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