不格好経営 ― チームDeNAの挑戦 (南場 智子)
(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)
ちょっと前にかなり評判になった本です。
マッキンゼーを退社してDeNAを立ち上げ一流企業にまで成長させたリアルなストーリーを、創業者である南場智子氏自身が語ります。
よくある“優等生的ビジネス書”といったトーンでもないですね。ひとりの起業家とそのチームのメンバを主人公に、創業から今に至るまでのエピソードを綴ったエッセイという趣きすら感じる内容です。
まずは、「まえがき」で語られる南場さんのプラス思考の姿勢が表れているくだりです。
超一流の戦略コンサルタントであった南場さんにとっても、自分で会社を切り盛りしていくことは想像以上に大変なことの連続だったようです。
普通に日々の業務を取り運んでいると見える企業であっても、その実態の姿は、水面下で足をバタバタさせている「水面に浮かぶ水鳥」だということです。
南場さんによると、DeNA成長の過程は、アクシデント・トラブル・失敗の連続だったとのこと。そういった中で、改めて気づくことが多々あったようです。
責任は問うが、フェアな対応。エキサイト、日本コカ・コーラ、サントリー等の姿勢に接して、南場さんは「社格」という単語でその見事さを表し、こう思いました。
さて、本書ですが、“ビジネス書”という視点でみると、南場さんの語るDeNA成長のプロセスそのものがリアルなケーススタディとしての役割を果たしているように思います。
とはいえ、強いて、ビジネスにおけるアドバイスがより直截的に語られているところを紹介すると、まずは「意思決定と実行」について語っているくだり。
いわゆる“背水の陣”ですね。打ち手に選択肢があることが頭の片隅に少しでもあると、取り組んでいるアクションが不調の場合の逃げ道になってしまうのです。
もうひとつ、「意思決定のスピード」についてです。
コンサルタント時代、南場氏は、これでもかと情報を収集しそれらを精緻に分析して判断していました。しかし、このやり方は経営現場の意思決定方法としては全く不適だったのです。
そして最後に、
この意志力が、まさに実業を預かるリーダーの「胆力」なのです。
本書を読み通しての感想ですが、評判どおり、良書だと思います。
南場さんの自然体の姿がストレートに映された爽やか系の著作ですね。この一冊にこめられた南場さんの強烈な想いがヴィヴィッドに伝わってきました。