素晴らしきラジオ体操 (高橋 秀実)
私が小中学校の頃の運動会・体育祭のプログラムは「ラジオ体操」で始まりました。「ラジオ体操第一~ぃ」、未だにあのピアノのメロディと体の動きは忘れていません。
書評によると、本書は、たいていの日本人が知っているラジオ体操をテーマにしたエッセイ風の「昭和日本文化論」だと紹介されています。
ラジオ体操の発祥の地はアメリカ。1925年、メトロポリタン生命保険会社が、「生命保険の宣伝」のためにラジオを通じて20分間の「体操」を流したのが始まりです。
それを当時の逓信省簡易保険局が真似ようとしたのですが、日本放送協会によってその性格が変容したのでした。その理由は「宣伝は放送事業の主旨に反する」というものでした。
そして、不幸な戦争に突き進む昭和12年。
日本国中の愛国団体が、全国統一組織「ラジオ体操連盟」に参加していきました。
とはいえ、当時の様子を辿ろうとする著者のインタビューに答える人からは、「御国のためにやっていた」という声は聞こえてきませんでした。「ずっとやっているから」「日課だから」「ラジオ体操は楽しかったから」、ラジオ体操を続けていたというのです。
さて、本書ですが、書評にあるように「ラジオ体操」をテーマにした「日本人論」「日本文化論」だと位置づけると大いに物足りなさが残ります。あえて硬派的な言い方をすると、高齢者問題を中心とした「都市社会学」のフィールドワークとも言えるかもしません。
ただ、あれこれの能書きはともかく、取り上げられた「素材」が独創的なだけに、ひとつの薀蓄を語る読み物としてはなかなかユニークで面白いものでした。