世界を、こんなふうに見てごらん (日高 敏隆)
動物行動学といえば、以前コンラート・ローレンツ氏が著した「ソロモンの指環―動物行動学入門」という本を読んだことがあるのですが、著者の日高敏隆氏はその訳者であり、日本における動物行動学の第一人者でもあります。
本書は、その日高氏によるエッセイ集です。
テーマはタイトルのとおり「ものごとの見方」についてです。キーワードは「イリュージョン」。
スジが通っているからといって真理とは限らない、ちょっと考えてみればそのとおりだと気づくのですが、でもついつい多くの人々はそう思い込んでしまうのです。もちろん私もそのうちのひとりです。
これは、一流の科学者(動物行動学の第一人者)の言葉であるだけに、とても興味深いものがあります。
ものごとを相対化してみることの大事さの指摘です。相対化してみるツールの「ひとつ」が科学であって、科学は絶対的ではないと著者は強く主張しています。
著者が大事にしたのは「『なぜ』と思う心」と、それを「実証しようとする『行動』」です。
著者は、自らを、生物学が好きなのではなく生物が好きなのだと語ります。生物学者としては異端児的な姿勢でした。
そういう著者を引き立ててくれたのが東京大学の竹脇潔氏であり文筆家の八杉龍一氏でした。著者はそれら先輩達の恩返しの気持ちをこめて後進の研究者を育てました。
これはまるで「生物多様性を保った自然環境」のような関係ですね。
いいですねぇ。私も、そうしたい、そうなりたいと思う姿勢です。