たまたま図書館の新着図書の棚にあったので手にとってみました。
著者の池内紀さんは、ドイツ文学者でありエッセイスト、本書は、信州の地方紙に掲載された著者のコラムを再録整理したものとのことです。
全体を「春夏秋冬」の4章にわけ、一話2・3ページのボリュームでテンポよくエッセイが並びます。
その中から気になったフレーズをいくつかご紹介します。
まずは、信州松本にある喫茶店を訪れた際の、著者の「文化」にまつわる感想です。
続いて、ネット情報に判断や自分の好みさえも委ねる「情報社会」について。
そして、政治や権威の話題になると、著者の切り込みは一気に厳しくなります。
「リストラ」「ローン」「セーフティネット」等に代表される片仮名語、また「後期高齢者」といった官製語を取り上げてその欺瞞的姿勢を批判します。
また、「裁判員制度」をテーマにした章では、日本人の心性の観点から、その導入の拙速に警鐘を鳴らしています。
こういった昨今の社会に関する著者の辛口のコメントには、私も含め首肯する人が多いのはないでしょうか。
最後ご紹介するフレーズは、「平成の大合併の愚」について。
瀬戸内の小さな町を走るバスの中の風景に接して、著者はこう語ります。
著者の厳しさと優しさの視線が交錯しています。