元彼の遺言状 (新川 帆立)
(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)
2021年第19回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作とのこと。
私は、最近の流行作家の方の小説はほとんど読まないのですが、テレビドラマ化された番組の評判も結構高いようなので、原作を読んでみることにしました。
テレビの方は観ていません。素直に「ミステリー小説」としての感想です。
主人公は “バリバリの若手女性弁護士”。作者の新川帆立さんご自身も弁護士なんですね。ディーテイルにリアリティがあるのも当然です。
さて、キャッチーでインパクトがある「タイトル」が際立つ作品ですが、それに加えて「主人公」がとても個性的なキャラクタで、この斬新なプロットが本作の魅力の源泉になっているように感じました。
まあ、小説そのものについての正直な感想としては、登場人物が多くて目くらましが過ぎるように思いましたし、エピソードの内容や配置も必要以上に複雑で、私にはちょっと「合わないな」との印象でした。
特に、最後の最後になって、それまでの伏線を回収しつつも、さらに新たな縺れた糸を示しながら謎解きを語るといった “まどろっこしい構成” はいかがなものかと思います。
「どうだ、ここまであれこれ考えているんだぞ」という気概は感じますが、そこは、“過ぎたるは及ばざるが如し”、もう3割ぐらいあっさりした仕上げに留めておいた方がスマートでしたね。
せっかくシリーズ化しても耐えられそうな「エッジの利いた主人公」を登場させたのですから、ちょっと残念です。