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魔女の笑窪 (大沢 在昌)

(注:本稿は、2024年に初投稿したものの再録です。)

 いつも聴いている大竹まことさんのpodcast番組に大沢在昌さんがゲスト出演していて最新作を紹介していました。

 大沢さんの代表的な作品である “新宿鮫シリーズ” はほとんど読んでいるのですが、この “魔女シリーズ” は初めてでした。
 お話を聞いていてその主人公の設定にちょっと興味を持ったので、まずは第1作目を読んでみようと思った次第です。

 一言でいえば、女性が主人公の “日本版ハードボイルド” といった類です。
 ネタバレになるとまずいので内容には触れませんが、ストーリーより、ところどころに顕れる大沢さんの価値観や美意識のようなものが気になりましたね。

 たとえば、クリスマスシーズンの街の賑わいを評したくだりは、

(p223より引用) 一年に一度の贅沢など、それ自体が貧乏くさく、私には我慢ができない。私は一年中、一度の贅沢もできなかった時代もあるし、できるようになってからは、ときと場所に関係なく贅沢をしてきた。皆でかけ声をあわせてする贅沢など、それこそ全体主義国家のマス・ゲームのようなものだ。遠目はきれいだが、楽しむ者より演じさせられる者の数の方がはるかに多い。そこにはため息だけしか残らない。

といった感じです。
 もっとも、主人公の考えを描写しただけかもしれませんが。

 さて、本筋の作品の印象ですが、期待していた割には、正直なところ平凡、 “可もなく不可もなし” といった感じでしょうか。主人公の性格付けも、過去の特殊な出自が繰り返されるだけで、「現在」の部分がほとんど描かれていないので、今ひとつ惹かれません。

 まあ、第二作目まで読んでみて、その先は考えることにしましょう。



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