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〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考 (山田 壮夫)

 この本も、以前参加していたセミナーの事務局からいただいたものです。
 とてもコンパクトな本ですが、なかなか興味深いアドバイスがあり刺激になりました。

 冒頭、著者は、タイトルにもなっている「ぐるぐる思考」についてこう説明しています。

(p20より引用) ぐるぐる思考は個人がひとつの脳みそを徹底的に使って〈アイデア〉をつくるプロセスです。東洋的な主観で発想を広げ、西洋的な客観で収束を図ります。評論家的な薄っぺらい正論なんて、相手にされません。

 「ぐるぐる思考」のプロセスは4つのモードから構成されます。

(p20より引用) 最初は思考の材料を準備するための「感じる」モード。それに続くのは、ありとあらゆる可能性を考え尽くす「散らかす」モード。第三のモードは〈アイデア〉を見つける「発見!」。そして〈アイデア〉を実現するための「磨く」モードです。

 このプロセスにより「左脳」→「右脳」→「左脳」と思考が脳みその中をぐるぐる回るというわけです。
 この個人の脳内サイクルのイメージは、対象としている「知識プロセス」が異なりますが、まさに野中郁次郎氏と竹内弘高氏が「知識創造企業」において提唱した組織としての知識創造モデル(「SECIモデル」)に類似した “動的な知識活動” の一形態のようです。

 本書は、あくまでも〈アイデア〉創造のプロセスを紹介したものです。単発的なアイデア発現のTipsを並べたものではありません。
 アイデアは「天才的なひらめき」により独創的なアイデアが生まれるという立場にたったものではなく、右脳と左脳の往還により試行錯誤を繰り返し、あらゆる可能性を考え尽くすといった「窮地に追い込まれた」ところから搾り出すものだという考え方です。

 本書を読んで、もう一つ印象に残ったのが、「電通『鬼十則』」です。
 ちょっと長くなりますが、覚えとして書き止めておきます。

(p24より引用)
1.仕事は自ら「創る」べきで、与えられるべきでない。
2.仕事とは、先手先手と「働き掛け」て行くことで、受け身でやるものではない。
3.「大きな仕事」と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4.「難しい仕事」を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5.取り組んだら「放すな」、殺されても放すな、目的完遂までは…。
6.周囲を「引きずり回せ」、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7.「計画」を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8.「自信」を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
9.頭は常に「全回転」、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10.「摩擦を怖れるな」、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。

 電通4代目社長の吉田秀雄氏が1951年に社員の行動規範として示したものとのことです。
 今から50年以上も前の言葉なので、今読むと強引でかなり攻撃的ですね。社員に対して “ともかくがむしゃらに働け!”と叫び続けているようにも感じられます。

 近年、「電通」で顕在化している不祥事や不正をみるにつけ、「電通」という会社の体質や労働環境、社員の扱い等々に大きな問題があるのは否定できません。その点は、間違いなくきちんと正されなくてはならないと思います。

 そこはしっかりと押さえたうえで、改めて “10のアドバイス” のメッセージを受け止めてみませんか。
 個々の項目で指摘しているエッセンス自体は、(その表現の適否はともかくとして)決しておかしなものではないと私は思います。

 どうしても「表現」が気になるのなら「です・ます調」に変えてみてはどうでしょう。

1.仕事は自ら「創る」べきものです。与えられるものではありません。
5.いったん取り組んだら “最後まで責任” を持ちましょう。
6.“イニシアティブ” をとりましょう。リーダーとして振る舞うのとメンバーとして加わるのとでは将来的な経験値に大きな差が出ます。
等々・・・

 リーダの示す指針として、現場に根ざした説得力があるように思いませんか?



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