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今までで一番やさしい経済の教科書 (木暮 太一)

 タイトルを見て、どんな内容か興味をもったので読んでみました。

 表層的な概説本ですが、「経済的な事象」の基本中の基本をザッと頭に入れるという目的であれば、読みやすく分りやすい本だと思います。

 ただ、説明の構成には論理的なストーリー立ては全くありません。経済的な事象を語るのに登場する「単語」の意味を、極々単純化して説明しているだけです。その点では、「超初級者向け経済基本用語集」といった方がいいかもしれません。

 タイトルにある「一番やさしい」というのはそのとおりだと思いますが、「経済の教科書」といえる内容ではありませんね。(私も読んだわけですから偉そうなことは言えませんが、)もし、本書が、大学生や新人社会人を読者として想定しているのだとすると、正直、あまりにも情けないと感じざるを得ません。

 あと、本書を読んで、どうしても首肯できなかった部分です。

(p186より引用) いくらがんばっても状況が変らない、現状維持をするだけでも大変、少しでも休むと下に下ってしまう。働いても働いても生活がよくならない。
 それが、資本主義の構造の問題なのです。構造上どうしてもこうなってしまう。

 そういう状況において、人はどんな仕事を選べばいいのか。著者の答えはこうです。

(p189より引用) 結論からいうと、「自分の人件費」を抑えられる仕事を選べばいいのです。つまり、自分の給料が安くても、無償奉仕でもやりたい、と思える大好きなことを仕事に選べばいい。・・・自分の人件費が少なくて済むということは、結果的に原価を抑えられるということで、利益を多く出すことができる。・・・
 「報酬をもらわなくてもいい」という点で優位に立つと、結果的に競争に勝つことができ報酬ももらえる。

 何かしっくりきません。大好きな仕事を選ぶべきというのはそのとおりだと思います。が、「人件費を抑えて利益を出す」という前置き(条件)がつくと物凄い違和感を覚えます。(結果、「報酬ももらえる」ということは、そこでやはりコストはかかるわけですし・・・)

 まあ、読み手によって、本書の評価はものすごくバラつくと思いますね。



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