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10年振りにU理論を読んでみた|14冊目『U理論[第二版]』

C・オットー・シャーマー 著(2017 , 英治出版)

10年振りにU理論を読んでみました

前に『U理論』を読んだのは2011年の5月。
光陰矢のごとし。
いつのまにか10年以上経っていました。

今回読んだ第二版が出版されたのは2017年なので、10年前に自分が読んだ本とまったく同じではありません。
本もアップデートされていますが、私もこの10年の間でいろいろなことを学んできました。
U理論と関連の高いシステム思考デザイン思考、さらにはティール組織や、ミンツバーグ教授のコンフィギュレーションなどを学んできましたから、10年前よりはもう少し理解できるはずです。
と思いながら読みましたが、書かれていることが自分の経験や過去の学びに当てはまるものがない場合には、なかなか理解は進まないものです。

本に書かれた「たとえ」や「事例」がピンとこないことが結構ありましたが、1つずつ自分なりに解釈していきたいと思います。

ダウンローディング Down loading

ダウンローディングというネーミングは「勝手に頭に飛び込んでくる思考」という意味からきているようです。
そうであれば「自動思考」のことだなと思います。
または「慣習」や「思い込み」あるいは「固定観念」「既成概念」でしょうか。
システム思考で言えば「メンタルモデル」のことですね。

勝手に頭に流れ込んできた思考(ダウンローディング)を一旦意図的に保留して、立ち位置を変えてみるといいます。
メタ認知です。
私も毎朝15分ほど坐禅していますが、マインドフルネス、瞑想や坐禅でトレーニングすることでダウンローディングをコントロールできるようになります。

観る Seeing

次は、思い込みを捨てて真実を見るというプロセスです。
システム思考でいうと「推論のはしご」をはずすことなどがそうです。
デザイン思考も「観察」を重視しています。

こんなエピソードを思い出しました。

私の長男が小学校5年生のときに、聖学院中高のレゴキング選手権に参加しました。
水槽に用意されたカメを見て、レゴでカメをつくるというお題が出されました。
このお題のポイントは「カメを観察する」ということです。
子どもたちもカメはよく知っているので、観察しなくても頭の中のイメージだけでブロックを組み立てることができます。
実際多くの子どもたちがそうしていたようでした。
でも実は用意されたカメの甲羅には特色があって縦縞模様があるのです。
その縞模様をレゴブロックで再現できたかどうかが評価のポイントとなりました。

レゴキング選手権の子どもたちの作品

このプロセスは、メンタルモデルや固定観念から自由になって、ものごとの真実を観ることであり、客観的に観ること、クリティカルに観ること、の重要性を説明しています。

感じ取る Sensing

次のプロセスでは、また立ち位置を変えます。
「観る」では、外から客観的に見ていましたが、次はあえて中に入り込みます。
課題に対して客観的に見ることが「観る」でしたが、今度は自分自身も課題の一部になります。
センスメイキング理論では「間主観的」「集主観的」「超主観的」というレベルが示されますが「間主観的」あるいは「集主観的」な状態で、行動を「観る」から「感じる」に変えます。

プレゼンシング Presencing

そして次のプレゼンシングというプロセスがU理論の醍醐味というか一番の特徴ではないかと私は理解しています。

プレゼンシングとはPresence=存在+Sensingの造語です。
オーセンティック・セルフ、すなわち本当の自分、本来自分がすべきこと、自分の役割、生まれてきた意味に気づき、それに基づいて未来を夢見るというプロセスです。

システム思考の考え方とも一緒ですが、自分が自分よりもっと大きな何か(=会社、国、世界、システム)の構成要素であることを認識し、自分の思考や行動がそのシステムに影響を与えることを理解することによって、自分の役割を果たすべく意思決定へとつながります。

私の勤務する聖学院というプロテスタント主義の学校の理念は「神を仰ぎ 人に仕う」です。
つまり、私たちの意思決定は神の意思に基づくものであるべきと教えています。
U理論では「宇宙との対話」「宇宙からのフィードバック」と説明しています。

結晶化する Crystallizing

変動的、一時的なものが固定化されるという意味での結晶化です。
プレゼンシングの状態が続く、常態化されることで、風土や文化のようなものが築かれていきます。
プレゼンシングは変化の兆しですが、たとえそうしたきっかけがそこにあっても、環境が整わなければ結晶化は進行しません。
そうした環境のことをここでは保持空間と表現しています。

プロトタイピング Prototyping

デザイン思考ではお馴染みのプロトタイプです。
プロトタイプは初期モデルのことではありません。
プロトタイプの目的は失敗であり、失敗することが必須です。
失敗がなければそのプロトタイプは失敗です。

「プレゼンシング」「結晶化する」というところまでのU理論のプロセスはなるほどと納得がいきますが、ここでなぜプロトタイピングが登場してくるのか、正直言えばちょっと違和感を感じます。

実践する Performing

プロトタイピングは失敗することが目的ですが、実践する、は失敗の経験を学習して、自信を持って、堂々と、そして覚悟を決めることが必要です。
考えているだけで行動が伴わなければ意味がありません。

以上がU理論のプロセスです。

U理論とは誰が経験すべきプロセスか

では、このU理論のプロセスは誰が実践すれば良いのでしょうか。

そもそもU理論とは何を実現するためのプロセスかと言えば、イノベーションです。
課題を見出し、変革するためのプロセスです。

ミクロ、メソ、マクロ、ムンドという4つのフェーズで説明がなされています。
ミクロとは個人で、メソはグループ、マクロが組織、ムンドは組織よりさらに大きい概念です。

ミクロ、すなわち個人に対してのUのプロセスはまあ理解できます。
個人の啓発、あるいは仕事スキルの学習と捉えればいいからです。
とはいえ、会社で、マネジメントの立場でないところで、一人だけU理論を実践していたら、「やたらスイッチ入ったやつ」と煙たがられるだけかも知れません。
私は職場でエコシステムのことを話題にしたことがありますが、理解されるどころか「課題意識がない」くらいの評価をされました。
自分だけがU理論を学んだところで、組織全体が理解していないなら先に進むことは困難だということを身に染みて感じました。
たとえ管理職であったとしても、会社の方針としてではなく実践するのであれば、やはり同じことです。
個人の実践だけでは結晶化から先のプロセスに至らないでしょう。
それではイノベーションは起こりません。

マクロ、すなわち組織におけるUのプロセスはどう考えるべきかは、さらに理解に苦しみます。
組織を集主観として考え、集合体としての思考や意思決定があると捉えるべきなのかも知れませんが、実際は経営トップや組織を率いるリーダー個人の問題なのではないかと思うからです。

特にダウンローディングからプレゼンシングまでは組織というより、組織を動かすトップやマネジメントの個人的なマインドや態度の話と考えた方がしっくりきます。

だからチェンジ・メーカーの出現が必要なのだ、と言われればまあその通りなのでしょう。

U理論のUの意味

図を見た通り、ダウンローディングに対しての実践する観るに対してのプロトタイピング感じ取るに対しての結晶化するが位置され、プレゼンシングが課題から解決へのターニングポイントとなります。

左側と右側が対応していて(どう対応しているのか理解できませんが)、段階的に開かれた思考開かれた心開かれた意思と設定されています。
観るの段階が開かれた思考というのもピンときませんが、原文ではOPEN MINDなので、そちらの方がまだ納得できます。
しかし、OPEN MINDとOPEN HEART(開かれた心)との違い、さらにはOPEN WILL(開かれた意志)とどう使い分けるのか、そしてなぜそれがそれぞれのプロセスに対応していると言えるのか、そのあたりは理解できないままでした。

シャーマー教授は実家の火事からU理論のインスピレーションを得ました。
では、私にとってのU理論とは何か?
特に、ずばりプレゼンシングの状態にある自分を経験したことがありません。

10年を経て、まだまだひよっ子。
経験不足のため、U理論にピンとこない私でした。

最後までおつきあいいただきありがとうございました。
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