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パーセプションフロー・モデル書いてみた|7冊目『The Art of Marketing マーケティングの技法』
音部大輔(2021, 宣伝会議)
私は、ビジネススクールではマーケティングやマーケティングリサーチ、消費者行動論の科目を履修していましたが、マーケティングの専門部署がある会社に在籍したことはなく、きちんと仕事としてマーケティングのツールを使ったことがありません。
ノウハウがないのは言っても仕方がないことですが、実践なしで読んだだけでは理解が深まらないので、実際にパーセプションフロー・モデルを書いてみることにしました。
取り扱い説明書やマニュアルを、機械やアプリなどを実際に操作しないでただ読むだけでは、いくら想像力をフル稼働させても、本来の価値や魅力を理解することはできず、当然評価もできませんよね。今、そんな状態です。
現在私は学校法人に勤務していて、寄付募集の業務を担当しているので、ブランドとは少し違いますが、「寄付募集プロジェクト」をテーマとして選びました。
さっそく 第5章 パーセプションフロー・モデルのつくり方 を読みながら書いていこうと思います。
最初に「誰が、いつ、どのようにつくるか」が問われています。
そして、「ブランド定義書、ブランド戦略を完成させておく」とありますが、今回は私が一人でお試しで書いてみるだけなので、そのプロセスは端折りたいと思います。
枠外のつくり方ー【名称】と【目的】、【ブランド戦略】
パーセプションフロー・モデルには枠の外に「ブランド名」「キャンペーン名」「戦略」「目的」「エリア」「ターゲット人口」「ラーニング目的」という項目があります。
私の勤務先の寄付募集プロジェクトは「ASFサポーター募金」という名称が付けられています。
おそらくサッカーW杯出場の頃、「サポーター」というワードが大流行りの頃に付けられた名称なのだと思います。
ちょっと恥ずかしい気がします。
でも調べたら結構「サポーター募金」「サポーターズ募金」ありました。
でも、ブランド名はあえて「寄付募集プロジェクト」のままとしました。
来年、勤務先の学校は創立120周年なのでキャンペーンは「周年記念募金キャンペーン」としました。
「目的」以下はプロジェクトの成功の定義を書くそうです。
このプロジェクトは寄付の促進ですから、目的といえば寄付者数と寄付金額の増加です。
それから単発の寄付者でなく継続的な寄付者を増やしたいと思っています。
具体的にターゲット人口としては、現在の寄付者数が年間400名程ですので、倍にするとして年間800名。3年間のプロジェクトとして2,400名の寄付者を獲得するためにアプローチするのはその10倍の24,000名と考えます。
「ブランド名」の下に「戦略」を書きます。
本の中では「中期経営計画にもとづいて年率5%の売り上げ成長を達成するために、本会計年度中に10万人の新規ユーザーを獲得するべく、ロイヤルユーザーが友人と一緒にブランドを使用し、ベネフィットを共に体験する機会を提供する」と具体的な例が挙げられていました。
私はそれを参考にして、「寄付を促進し、寄付が学校の安定した財政基盤の一助となるように、120周年の機会を利用して、今まで寄付をしようと考えていなかった潜在寄付者約24,000人にアプローチをして、3年間で新規寄付者1,200名を含む2,400名の寄付者数を獲得させるべく、寄付をすることによって幸福感を得るというベネフィットを提供する」としました。
枠内のつくり方ー【現状】【興味】【購入】【再購入】
最初に書き込むのは【現状】の「行動」と「パーセプション」です。
ちなみにパーセプション(perception)とは日本語で「知覚」と訳されるようですが、マーケティングの文脈では「認識」と捉えた方が的確だと言います。
私自身が初めて自分の出身大学に寄付したときのことを思い出してみました。
安月給で毎月なんとかやり繰りしていた自分が母校に寄付をするなんて夢にも思っていませんでした。
寄付をするのは卒業生の中でも特別な人だけであると思っていました。
大学をクライアントとする広告代理店に転職をしたら、母校が自分のお客さんになりました。
卒業生ということで可愛がってもらい、お仕事もいただきました。
そんなこんなで大学に寄付をするということを何となく意識するようになり、自分も寄付をする余裕ができてきたんだなと思うと少し嬉しい気がしました。
大学の創立100周年をきっかけに思い切って1万円寄付をしました。
多くの人はまさか自分が出身校に寄付をするとは思っていないと思います。というか、寄付を意識したことがないのではないでしょうか。
寄付は誰かがするもので自分ゴトではない。
自分は裕福ではないので寄付をすることが相応しくない。
そんな現状の「行動」と「パーセプション」を考えました。
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【現状】を書いたら、次は時系列通りではなくゴールを確認します。
ゴールは最終的には【購入】ではなくて【再購入】ですがまずは【購入】を確認します。
購入してもらうには購入意向の確立を目指す必要があり、【興味】の段階があります。
今回の場合は「購入」ではなくて「寄付をする」ですが、私は【購入】と【興味】をこう書きました。
「母校に寄付をする」という行動のパーセプションは「寄付するハードルが意外と低かったこと」です。
興味の段階では寄付先として母校を候補にしてもらう必要がありますが、
「母校に寄付をするということは自分の人生を肯定する意味がある」というパーセプションがあります。
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【再購入】は寄付の継続です。
寄付をしたことがなかったときは、自分は寄付するような立場にないと思っていましたが、継続的に寄付をする、いわば「寄付慣れした人になる」ということは、自分が寄付をするに相応しい志の高い人物だと自覚しているということになります。
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枠内のつくり方ー【満足】【発信】【試用】【認知】
【満足】は寄付者の期待を超えたときに生じます。
今まで寄付をしたことがない人が寄付をするのですから、寄付者は寄付をするために、自分に対して一所懸命、寄付をする言い訳を考えるわけです。
「100周年だから」とか、「母校から◯◯賞受賞者が出た」とか、「スポーツの大会で優勝した」とか、母校の名誉を自らの誇りとして寄付を正当化するのです。
ところがせっかく寄付をしても学校に蔑ろにされたり、無視されたりしたならば「寄付なんてしなきゃ良かった」と思います。
ですから、寄付者に対しての迅速なフィードバックは大切だと思います。
心のこもったメッセージのフィードバックがあったとき、自分のした寄付が有効に使われて、さらに良い成果があがったという報告があったとき、自分の寄付をしたことの見返りへの期待を超えて、とても幸福な気持ちになります。
【発信】はそうした幸福感を自分だけで留めずに誰かと共有したいと思ったときにおこります。
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そして最後に時系列を戻って【認知】の項目を考えます。
私はこんなパーセプションを考えました。
「寄付するのは珍しいことと思っていたが、実際は多くの友人や知人が寄付をしていて、寄付をする人ほど成功している。」
「また、寄付をすると人は幸福になる。」
寄付をすると人は幸福感を得られるというのは実証された結果があるそうで、いくつかの寄付サイトでそれを紹介していました。
まさにパーセプションを活用したマーケティングです。
そしてついに、こんなパーセプションフロー・モデルが書き上がりました。
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書いたパーセプションフロー・モデルをどう活用するか
自分の体験をもとにパーセプションを整理して、そして自分で書いたものを眺めてみて、あらためていろいろと確認できました。
自分が自らの選択で人生を歩んできているわけですから、母校を認めて応援するということは、自分自身を肯定することにつながります。
幸福学の研究にある通り、他者のために何かをすることは、幸福感を自分に与えてくれます。
つまり、寄付をすることは寄付者をも幸せにします。
それを知覚刺激としてどう潜在的寄付者に伝えるべきなのか、と考えて出した答えの一つがnoteの活用です。
私の勤務先ではnoteを使って卒業生を紹介していくコンテンツを4月からスタートしています。
このパーセプションフロー・モデルを、noteの記事内容がコンセプトから離れないようにするための一つの基準にしたいと思います。
これから、120周年に関しての様々な行事を企画していきます。
その際にも、学校の特定の人たちだけで排他的にならないように、多くの卒業生をも巻き込み共感してもらい、さらには卒業生ではない一般の人にも注目をしてもらい、寄付を検討してもらうヒントにしたいと思います。
そして高いハードルを超えて寄付者となってくれた方が満足感を持って、継続的な寄付者へ、さらには自らが発信者となり寄付のエバンジェリストとなってもらえるように、寄付者自身が幸福になることを支援しなくてはなりません。
そのためには感謝の気持ちと、その気持ちの表現が重要となります。
そのことをスタッフ全員がこれをみて理解してくれたら良いなと思っています。
気づきはあったものの、これであってるでしょうか?
プロフェッショナルがいる環境で働きながら学ぶということがこれまでできてこれませんでした。知識を書籍やインターネットから得るだけで、独自の解釈、独自のやり方でずっとやってきたのですが、今回も本を読みながらの「なんちゃって」です。
こんな感じで良いのでしょうか?
プロフェッショナルのマーケッターの方のご意見とかいただけたらいいなと思っています。