晴れ女ミハル
今日は秋の御魂祭
先祖供養の為に名前を書く
自分の姓とこっそり母の旧姓も書く
みんなの名前を丁寧にお社さんは読み上げてくれる
すずさんはお笛の奉納のため、姿を消した
私は初対面のすずさんのお友達ミハルさんと一緒に外で待つ
その人も見えない世界を求めてる
彼女のことは少しかいつまんですずさんから聞いている
詳しいことは何も知らない
でも魂は繋がっている
自分のできることはやりましょう
ここは来るもの拒まず、去るもの追わず
心が勝手に来たくなるだけ
何十年来ているから偉いとは思わない
わたしは落ちこぼれ
だからずっと離れられない
宗教ではなく信仰
信仰とは哲学ではないだろうか
初めて来た日が御先祖供養の御魂祭
何かに導かれているとミハルさんは感じたらしい
すずさんと十数年ぶりの再会は
先日突然彼の世に還ったYさんの告別式
ミハルさんは葬儀場で時々働いているという
「天命庵ってなに?わたしも連れて行って」とすずさんに頼まれたそうだ
私はミハルさんと御魂祭を一緒に過ごす
終わった後は坂を登って、お御堂にすずさんとミハルさんとお参りに行く
今日も祠の中のマリア様の元から水の音だけが聞こえてくる
お昼ごはんを食べようとお笛のお師匠さんたちの中に紛れる
その時に…
実はすずさんからもらった「かなちゃんバック」は元々ミハルさんの物だったと教えられる
なんだそれ…
すずさんはわたしに似合うと思ってどうやらあえて持って来たらしかった
とても高いバックで、随分前に自分もミハルさんからもらったけれど
自分には似合わない
でも捨てるのは忍びない
その時にふと浮かんだのが私の顔
わたしならば似合いそう
そう踏んでわたしと会う時に持って来た
まんまとすずさんの策略にハマる
いやそれ以上にそのバックをわたしは気に入った
一目惚れ
何十年経とうともいいものはいい
わたしはお出掛けにはいつも持ち歩く
すずさんを介してミハルさんのバックが既にやって来ていた
その後からミハルさんもやって来る
不思議な不思議なご縁を感じる
彼女はおやさまの元へやって来て涙が溢れてる
帰りにはすずさんは彼女のお笛のお師匠さんと用事があるのでミハルさんと二人で帰る
駅まで話しをしながらゆっくりと歩いてゆく
ミハルさんは明け透けに何でも自分の話しをしてくれる
彼女の生き様はとてもとてもわたしには真似が出来ない
それでも暗くない
お年を聞くとわたしと同級生
占いもする彼女はわたしの生年月日を聞くと
「この生まれはサポートする人」
そう言われればそうかもしれない
駅前で町中華のお店に入り、晩ご飯を一緒に食べて帰ることにする
ミハルさんが話しをして、わたしは黙って頷く
話すことで楽になるなら
少しでもわたしで役に立てるなら何でも聞くから
大丈夫、大丈夫
ちゃんと親(神)は呼んでくれたから
「わたしは傘をさしたことがない晴れ女、ミハル」
彼女は自分のことをそう言った
これからは心も晴れやかな女になって欲しい