上手になる

本当はかなしくて、さみしくて
たまらないはずなのに
その気持ちを出せなくなる

もうすぐ母が旅立ってから
丸二年

この時間はどうやって過ごして来たのか記憶が薄い
こころの中は真っ暗闇
そんなんではいけないだろうと周りからは叱咤される

それでもわたしの心は晴れることはない
母がいなくなってから一年を過ぎた時
「よく生きてきた」とおやさまから言われる

わたしはふらふらになりながら最低限のことをしていた
自分のことなのに
自分として生きていない

本当はさみしくて仕方ないのに

最近はよく
「あなたは強い」と言われることが多くなる
わたしって強いですか？
そんなことはありません…
心の中でそうつぶやく

ニコニコしていても
ひとりになると涙が出る
止まらない
何もする気力なんかない
生きている意味なんか感じない

孫が産まれるよと言われても
嬉しくないこともないけれど
そこは男親
距離がある
やっぱり孤独
でも気楽だ

いつまでもこの世にとどまれないことも頭では分かっている
この肉体は必ず朽ちる
そんな教えを学んでいる

いつも隣には母がいた
いつも見守ってくれていた
笑っていた
多分今でも見えなくなったけど見守ってくれている

身体は弱っていたのに気丈だった
旅立つその時まで装っていた

そんなことを考えながら
夕闇の中
買い物へ行く
そしてまた落ち込んで坂道を登る

私はどうしたら立ち直れるのか
仲良くしてくれる人もまた増えてきた
不思議なんだけど

元来私は明るくて
何処へ行っても友達ができる
病が有っても負けてない

みんないろいろなものを背負っている
背負い切れないものは神は与えない
そんな風に生きてきた
嘘、偽りなく生きてきた
それが私の誇りである
「大丈夫、大丈夫」と自分に声をかけ
なんとか立ち上がる

本当は全く大丈夫じゃないのに
強がりなのか

二人でいても孤独を感じ
心の繋がらない思いは苦しくて
心の中は真っ暗闇

今の私はあの頃と同じなのか

上手に気持ちを隠してる
気持ちを隠すことが上手くなる

ひとりになると涙は出る
ひとりで暮らすことが上手になる
独り言が多くなる

私は孤独が好きなのか
心の中を見つめてみると
ひとり遊びが上手くなる

もともと孤独
上手くなったわけじゃない