すず先生
もっともっとはなしをしたかった
いつまでも後悔は残る
母の帛紗に触りながら
お茶のお稽古をする
今日は大丈夫と思っても明日にはまた落ち込む
行ったり来たりの繰り返し
母がいないと泣いている
これが生きるというものか
母が彼の世に旅立って
わたしの周りも変わっていく
この私がお茶のお稽古を始めるなんて
青天の霹靂である
おそらく彼女でなければ私はお茶を習わない
トンチキな師匠と弟子の迷コンビ
すずさんは私を上手に上手に持ち上げて
落とし所を心得ている
ちょっと乗せられちゃった感もあるけれど
母の帛紗を触っていると見えない母の生き方が伝わってくる
なんでも丁寧に心を込めて生きていた母の生き方
「不思議だよね、お母さんの娘時代の帛紗が出て来るなんて…」
まるでこれでお茶を習いなさいと言われたように
母は肉体がなくなっただけで、魂は生き続けている
すず先生、友達なのにいつの間にかお師匠さんになっている
お師匠さんはお茶を初めて半世紀
思わず二人で顔を見合わせる
五十歳のおばちゃんが赤子の手を捻るのは簡単か
「私の個人レッスンは高いのよぉ〜」
なんちゃってが後から追いかけてくる
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