卯の香立て
母が大好きだったケイさん
リュウマチで身体が不自由
でも心はとても自由
明るい人
いろんなものを克服して
母は力をもらっていた
でもケイさんも母から力をもらっていたと
母も明るかったから
母はケイさんに鳩の形の小さな小さな和三盆のお菓子をあげた
あげたがりの母
ケイさんのがんばりには頭が下がると
二人で行って駅前のお店で買った
ほんの数ヶ月前に
母があの世に旅立ったことを知ってケイさんは涙を流した
あの美味しいお菓子をもらったまま、お返しもしていないと…泣きながら伝えてくれた
お返しする前におやさまにしがみついて、行ってしまった母
息子さんは役者さん、時々朗読会をやっている
母は彼の朗読会には何回か足を運び
彼の朗読が大好きだった
ケイさんが母のためにとかわいい卯の香立てとお香をくださった
香りはあの世では食べ物らしい
よい香りをいっぱいかいで下さいと
母の前でかわいい卯の香立てでお香を炊いた
やっぱり泣いてしまう
母がいないことと
ケイさんのやさしいさに
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