「顧客が本当に必要だったもの」に向き合うことは、未来の自分にとっても必要なこと | Whimsical Discovery #119
出オチですが、有名な風刺画の実写版をつくってみましたというネタです。リンゴの木にロープでタイヤをぶら下げてハンモック的な感じで読書を楽しめたら心地良いんじゃないか?という思いつきです。
このような計画性のない事案はビジネスの現場でも多々起こるのですが、顧客とチームにどれだけ真剣に向き合えたかどうかで、どんな失敗も未来の自分にとって誰にも否定されない経験の積み上げになっていきます。
ちょっとエモい寄りの話をしつつ持続可能なキャリアの可能性の話をしてみます。
「顧客が本当に必要だったもの」とは
通称「顧客が本当に必要だったもの」と呼ばれるブランコが設置された木のイラストのことを指します。デザイナーやエンジニア界隈ではそこそこ有名なイラストで、"例のイラスト"と呼ばれパロディやバリエーションも豊富でゲーム化されていたりします。
明確な作者や発祥は不明ですが、ITビジネスやサービスデザイン、プロダクト開発における多難なプロジェクトの実体験や、よく起こりうる事態を強烈に風刺した絵になっています。
なんでこんなコトが起こるのか
顧客の期待した通りのシステム・デザインが完成しなかった原因は、一見すると作り手側の思い込みや都合の押し付けだったかと考えられますが、そもそも最初に顧客が説明した要件からしてズレていたというオチです。
正直ぜんぜん笑えないです。
Webデザイナー的な感覚で言うと納品直前のクライアントのちゃぶ台返しも似たような文脈ですね。顧客自身にも自分が必要とするものが分かっていなかったり、開発者側もそのことに気付けずに有耶無耶でプロジェクトが進んだ結果、誰も幸せにならない結末を迎える悲しいストーリーです。
しかし、簡単に誰もが自分の伝えたいことや実現したいことを言語化したり視覚化できれば苦労しません。対話とはそれだけ難しいことなんですよね。僕も10年以上このキャリアやってて未だによくわからんです。
モノづくりに関わるすべての人が続けていくこと
個人ならまだしも関わるメンバーの人数や規模が大きくになるにつれ不確実性も大きくなります。主語が大きいですが僕のようなデザイナー/エンジニアは概ね、仕事として目の前にいるお客様に「必要なもの」を作って喜んでもらうことを生業しています。
その過程で多様な困難に向き合い、専門的に職能の違うチームメイトや前提知識の異なる顧客と対話を続け、ギャップを埋めながら「より良い」という誰が正解を持っているかもわからん謎の定義を評価したり、カイゼンしていくことで「学び」と「報酬」を得て、これからもこの生業を延々と続けていくのだと思います。
そんな多難で摩耗が多い状況では「自分の成長を感じられる」活き活きとした学習が不可欠で、それがタフな生業を持続可能にするエネルギー何じゃないかなと僕は考えています。
力強いセンターを形成することが心地よい体験をつくる
冒頭の風刺画は「デザインパターン」を生むきっかけを作た建築家・クリストファー・アレグザンダーの著書でも引用されており、このような悲しい出来事が起こらないようにするために創造的な失敗体験を通して事象に応じた言語化をチームでおこなうことを強く勧めています。
アレグザンダーさんは"まちづくり"をメタファーに、システムそのものを全体を意識して一部の部分を中心により強くすることで、全体が活性化するという理論についても語っています。興味のある方はぜひ購読をおすすめします。
その起点として「ユーザーの物語」や「現在≒未来体験」、「課題の原理そのもの」に注目する点では、組織設計やチーム開発の文脈でも活かせる点が多そうですね。
創造的な失敗を科学する
話は戻り、今回の僕のタイヤをリンゴの木にぶら下げる試みです。
突発的に計画無しで作ってしまったので体重が100kg近い僕にとって現状の見立てだとちょっと心もとないです。これは果たして失敗なのでしょうか?
作る工程ではタイヤの重さ、紐の太さと長さ、木の高さや枝の耐久度、木の生える位置ち周辺の環境、地面の柔らかさ etc... きりがないほどの検討事項が課題となりましたし、単純に「ローケーションとして映える」みたいなエモい評価から、耐久度や環境設計など科学的な解釈が頭をめぐりました。
単純な「木にタイヤをぶら下げる」というデザイン行為に対して哲学するキモいおじさんになっていきましたね。何のためにこんな無駄なことをしたのでしょう。
複雑なことをゆるく、深く考えることは重要
今回は結局、失敗だったのかと言うと実際のところはわかりません。作ったことによって近所の子供が集る場ができたり、未来の僕の子孫が遊具として遊ぶのかもわかりません。
少なくとも僕がそのデザイン行為をしたことで内面に向き合うことができました。これは間違いなく僕の今後のデザイナー人生にとってライフスタイルにとって、ただの日常行為の「繰り返し」でなく選択したとによって「積み重ね」となった瞬間です。
また長々とポエムを書いてしまいましたが、やはり「モノづくりは愉しい」という言葉に尽きます。必要の意味を考えすぎて行動を起こすのを躊躇っている方はまず創造的な失敗をする前提でチャレンジしてみてはいかがでしょうか? たぶん、未来の自分にとっては必要なコトになっていると思います。
@norinity1103でした。
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参考文献・書籍
「全体性のたまご」によるデザイン技法〜全体から分化させるワークショップとプレゼンテーションのつくりかた 」/ 井庭 崇
形の合成に関するノート/都市はツリーではない / クリストファー アレグザンダー
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