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サンティアゴ・ナイト【ポルトガルの道 休息日#1】

カミーノ・デ・サンティアゴの巡礼路、ポルトガルの道280㎞を無事歩き終え、サンティアゴ・デ・コンポステーラにあるサンティアゴ大聖堂に到着。

しかしまだまだ歩き足りない私は、さらに歩こうと思いボーナスステージにのぞむことに決めた。これについてはまた次回書くとして、そのボーナスステージにのぞむまで、サンティアゴの町で2日間休養をすることにした。
久しぶりの休息日。
いろいろとやりたい用事がある。やりたいミッションを全て済ませて、2日後にボーナスステージのフィステーラの道を歩き始めたい。
その用事を全て書き出してみた。

①巡礼証明書をもらい修道院にチェックイン。
②シールちゃんに会う。
③デイヴとクリスティーナと3人だけでクリスティーナの誕生日会をする。
④その他の巡礼仲間の何組かに同日夜に誘われている飲み会をどうするか問題。
⑤タルタ・デ・サンティアゴ(ケーキ)を食べる。
⑥何かいいカミーノのお土産を買う。
⑦H&Mで新しいレギンスを買う。(2日前に干したまま忘れてきた)
⑧歩き終えてから履く新しい靴を探す。
⓽郵便局に局留めで預けている荷物を取りに行く。
⑩荷物を極限まで減らして、3日間不要なものをコインロッカーに預ける。
⑪ボーナスステージのハードな道に、のぞむ準備。買い出しや行程の確認、宿予約等。
⑫どこかで美味しいオレンジジュースを飲む。
⑬前のカミーノ仲間であるフォルクに7年ぶりに会う。
⑭ボーナスステージが終わってからの旅の予定を考える。
⑮サンティアゴからセビージャに飛ぶ飛行機の予約。

私のサンティアゴ・ミッション

以上のような、盛りだくさんの15個の用事をサンティアゴ2泊の間に片付けていく。
まずは、サンティアゴ大聖堂で昼12時のミサに出て、巡礼証明書を事務所に行って発行してもらったので、ミッション①はクリア。

今日サンティアゴに到着した巡礼者は2300人を超えたらしい!
オーバーツーリズム過ぎる。
スピリチュアルの道を選んだ巡礼者は多分20人くらいだと思うけど。

さてさて、今日はこの後どうしようか。
まず、最大の問題として、今夜で離ればなれとなる人たちから晩ごはんを誘われすぎて、どこの宴会に参加したらいいのかという問題。
これは私が小学生時代から時々起こっていた問題に通ずるのだが、私が一見すると割と誘いやすいタイプなのか、誘ってくれる人が多い。もう一つの特徴としていろんなジャンルのグループから誘われやすいということがある。小学生の時も、クラスの中心キャラが集まる賑やかなグループからと、おとなしめの静かなグループからと、両グループから「遠足で一緒にご飯を食べよう」と言われがちだった。多分どちらからも誘われてしまう人はあまりいない。普通、どこかに属しているからそれ以外のグループは遠慮して誘わないか、どちらにも属していないためどちらからも誘われない。なぜ私はこうなるかというと、学生時代の私は八方美人だったからかもしれないけど、どちらにも属せる謎なキャラだったせいもある。逆に、どこにも属していなかったとも言えるけど。
バイト先でもそうだった。AグループからもBグループからもCグループからも誘われる人。すごく仲良くなったと相手に思わせてしまう思わせぶりな女だったのかもしれない。かと言ってどこからも求められる必要な人材というわけでもないし、人気者でもないし、どこにでもいい顔しているわけでもない。害がなくちょうどいい感じなのかもしれないし、そういう集まりが好きそうで誘ってほしそうに見えるのかもしれない。本人的にはどこにもそれほど心を許してなかったりするのだが、人は見たいようにしか見ないから私だけの問題でもない。
社会人になって年齢を重ねてからは、好きな相手以外は全て避けて狭めていく生き方をしてきたので、こういった問題はもう20年くらい起こらずに生きてきたのだが、カミーノで起こってしまった。それは扉をできるだけ閉じてきた私が、カミーノでは開きっぱなしになって過ごしたからだと思う。それはある面ではいいことかも知れないけど、いいこととセットで面倒なことも起きるのが人間関係。
バイト先や学校と違って、誘ってくれている人たちは、今日を逃すともう一生会えないような人たちだから厄介である。できるだけ会って、お礼とお別れをちゃんとしたいなとも思い、そういう話をクリスティーナとデイヴにしたら、「自分も同じようなタイプだけど、好きな人と過ごせたらそれでいいし、どうしよっか…」と3人で悩み、「3人で飲み始めて、誘ってくれている人たちの店を片っ端からバルホッピングして、最後3人だけで締めようよ」というデイヴの案にのった。なるほど。バルホッピングを「ああ、ハシゴね」と私が言って、3人の間で「HASHIGO!」が合言葉となった。
というわけで、夜はハシゴ酒ナイトをするとして、いったん解散し、私はシールちゃんの元に走った。

シールちゃんは、夜にハシゴのついでに会うのではなく、ちゃんと会って最後の時間を過ごしたかった。彼女はアジアンレストランに入ったばかりだというので、そこで合流し、一緒にラーメンをすすった。サンティアゴで韓国人のシールと一緒にラーメンをすする。なんて良い打ち上げだろう。たとえラーメンがぬるくて味がいまいちだったとしても、とてもいい時間になった。「私は韓国に明日帰るけど、あなたはまだまだ旅を続けるのね。うらやましいな。あなたは私が長年守ってきた禁酒の誓いを一瞬破ってしまったきっかけになった人だから思い出深いわ。私、あなたが大好きよ。また連絡するね。大阪か釜山で会おうね。」とシールちゃんは涙を2粒ほどこぼしながら言ってくれた。そのラーメン屋の向かいがスポーツ用品店だったので、シールちゃんとその後一緒に立ち寄って、HOKAのサンダルが歩きやすくていいというシールちゃんの勧めで、巡礼を終わってからの旅シューズは、彼女とお揃いのHOKAの黒のサンダルにすることに決めた。というわけでミッション②と⑧をクリア。

おてもと。美味しくはない、普通のラーメン。
でもシールとの思い出がつまってる。

それから、今日から2泊泊まる予定の町はずれにあるセミナリオへ。
セミナリオという神学校に併設した256人収容のサンティアゴ最大のアルベルゲ(巡礼宿)で、こちらに泊まるのは初めてである。「最も眺めの良い場所」という謳い文句は裏を返せば、巡礼が終わって油断している巡礼者を予想外に打ちのめす勢いの上り坂を上った場所にある、という意味だった。ヒイヒイ言いながら上っていると、久しぶりにMr.スヌーピー(スヌーピーのタトゥーを入れてスヌーピーのぬいぐるみを連れて歩いている若者)にばったり再会し、この地に到着できたことをお互いに讃え合った。
セミナリオは、22€(3300円)で個室で泊まれるからなかなか良い。立地が町はずれで大聖堂や中心地まで20分ほど歩かないといけないことと、心が折れる程の上り坂に目をつぶればかなりいい条件だと思った。シャワーを浴びて洗濯をし、久しぶりの素敵な個室でゴロゴロした後、また町へ繰り出した。

本日の宿↓
HPからの予約必須。

めちゃくちゃ部屋がある。果てしなく遠いマイルーム。
なかなかいい、シンプルなマイルーム、3300円/1泊


サンティアゴのミサの様子などはこちら↓


デイヴと待ち合わせして2人でお土産屋さんをいくつかのぞいたり、バルでおしゃべりしながら休憩したりして過ごす。
サンティアゴのいいところは、キリスト教最大の聖地という意味合い以外では、たくさんのいいバルやレストランがたくさんあることと、お土産物屋さんや雑貨屋さんがたくさんあること、それがちょうどいいサイズの距離に集まっていること。一般的な観光地としてもかなりすぐれていると思う。ちょうどいいサイズ感の町を歩いていると、あちこちで知り合いに会いまくるから、ここは歩き終わった巡礼者にとってやはり特別に楽しい町だと思う。
結局気づいたらカテドラル(大聖堂)の前のオブラドイロ広場に戻ってきてしまい、そこで座り込んでぼーっとカテドラルを眺めてしまうのも巡礼者あるあるかも知れない。オブラドイロ広場で座ってデイヴと過ごしていたところにクリスティーナが合流し、夜のミサに参加。その後、いよいよHASHIGO作戦の開始となった。

HASHIGOタイムは、何軒バルをハシゴしたかは覚えていないし、ほとんど写真も残っていない。動画はいくつか残っているが、全員もれなく酔っぱらっていて意味不明で面白い。最初は確か、樽をテーブルにした立ち飲みの店でワインとチーズだけで3人で始めた。それからイタリアーノグループがいるバルに顔を出してギャハハと笑って、その後ストロングアイライナーレディー達がテラス席で飲んでいたところに立ち寄って適当に話をして、その後はドイツ人グループのヘビの宿の仲間のいるレストランへ行った。ここでもワハハと笑って飲んでつまんでいたが、酔っ払いだらけのドイツ人の勢いに圧倒されなかなか抜けられそうにない雰囲気だった。何度もまた会おうねとかお別れムードに持っていっては引き止められたので、写真撮影タイムになったときに3人で示し合わせて一緒にドロンした。本当にドロンという昭和ワードにふさわしい消え方で笑った。
それから3人で別のバルに行って、デイヴがこっそり店員に誕生日のサプライズを頼んでいて、ろうそくの火がついたティラミスが登場し、誕生日の歌を歌って、クリスティーナが大喜びでろうそくの火を吹き消した。私からは、さっきお土産物屋さんで買った「SANTIAGO2023」と書いてあるマグネット(私とお揃いにした)と、タルタ・デ・サンティアゴ(サンティアゴのケーキ)をプレゼントした。
3人でいろんな話をして、たくさん笑って、あっという間に夜中になった。とにかくいろんな話を、仕事の話とか、これまでの恋人の話とか、自分の性格の話とか、カミーノをなぜ歩いたかとかそういう話をたくさんした気がする。
それから私のこの後の旅について、色々アドバイスをもらった。ヨーロッパを去る前にイギリスのシェフィールドに寄ってデイヴに会って、南米はデイヴがパタゴニアをとにかく推していたからパタゴニア探訪を候補に入れ、最後はメキシコのモンテレイでクリスティーナに会うという、これからの私の旅の大枠が決まった。
クリスティーナとはこの後の3日間のボーナスステージをまだ一緒に旅できるが、デイヴとはここでお別れとなる。いつまでも喋っていたくて夜になり、日付が変わってしまっていた。6年ぶりにオルッホというお酒を飲んだことは覚えているが、6年前に初めて飲んだ時も記憶が飛んでしまい、なぜかサルサを誰かと踊った記憶だけがうっすら残っていたが、今回もフワフワした記憶しかない。旅の恥はかき捨てということで良しとする。
クリスティーナのホテルまで2人で送って、私の泊まる町はずれのセミナリオまでデイヴが送ってくれて、そこの階段で座って話をして、それから別れた。
この人になら話せる、この人に聞いてほしい、この人とは何十年来の付き合いだったっけと思えるくらいの心地良さを感じる出会いを、私はこれまでの旅で、性別関係なく何度か体験している。クリスティーナとの出会いもそうだと思うし、デイヴとは最初に会った時からそういう感覚があったから、すごく仲良くなれたのが不思議だけど不思議じゃない感じ。サンティアゴに到着した夜に、最後まで一緒にいられてお祝いできたことは、ご褒美のようにも思えた。
デイヴがいつも使っていた、ぼろぼろにほつれたちょっとみすぼらしいナップサックがぶら下がっている背中をずっと見送った。あのぼろぼろのナップサックがなんでこんなにもときめくくらいにチャーミングに思えるんだろう、これはきっとカミーノの魔法だな、と酔っ払いの私の頭にかすかに残された冷静な部分で、そんなことを思った真夜中。

ハンブルゲサ
私は肉はもうちょっと火を通してほしいタイプだが、美味しかった。
クリスティーナとデイヴとHASHIGO中
メキシコでカミーノバージョンでキメてきたクリスティーナの爪も伸びてきた。
気が利く男のバースデーティラミス
ぼろぼろのナップサックにときめく、
夜中のHASHIGOの合間


そんなわけで巡礼歩き旅の合間の休息日前編、①、②、③、④、⑤、⑧は達成。明日はそれ以外の全てのミッションに取り組む!明日は早起きして歩かなくていいのが嬉しいけど、ちょっと物足りない。とは言いつつ、朝起きられる自信が全くないほど飲み過ぎた私であった。

後編に続く…



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のりまき
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