オーブラック牛とfarçousと羊【ルピュイの道2019#9】
サンシェリードブラックで美味しくて謎深き晩ごはんを食べた翌朝、早起きしてまた1人歩き始めることにした。今日は17kmほど先のサン=コーム=ドルトという村まで歩く予定。距離は短いが山を歩くらしいので早めの出発である。
(こちら↓の続きです)
大雪や大雨続きの日々だったが、今日の曇り空を西へ抜ければ青空が見えそうな予感。
カミーノのサインに従って進んでいく。
カミーノの巡礼路「Camino De Santiago 」は、フランス語では「Chemin de saint jacques de compostelle」と書く。cheminが読めなかったし、聞いても上手く発音ができない。フランス語ってやつは本当に聞き取りづらいし当てずっぽうでも読めない。そう考えるとスペイン語の読みやすいこと。
どうやら今日のルートは牧場をひたすら歩く道のようだった。牧場、つまりは牛。
そしてつまりはオーブラックの牛だらけである。
オーブラック牛を食べまくってきた私に対して、牛の洗礼を浴びる。冷ややかな視線。
お前、俺らの仲間食ったよな。知ってるぞ。美味かったか。歩いたら痩せるって思ってるらしいけど、あれだけ牛の肉やらチーズ食べといて、歩いたくらいで痩せられると本当に思ってんの。どこまで行くの。
お前、日頃牛乳飲まないくせに、牛乳美味しいとか今だけ思ってんなよ。
そんな声が聞こえてくる。気がする道。
4766番も
4350番も。
みんなが知っている。
そんな気がした。
不思議な道。
知ってる。バレている。
お昼ごはんは、道で再会したイザベラとここで食べることにした。
イザベラいわく、この地方の郷土料理がここで食べられるらしい。
「farçous」
ファルコス?
「No,farçous」
ファルソス?
「No,farçous」
ファルスー?
「No,farçous.Anyway let's tryファルsomething!」
結局読めないし、イザベラに何度聞いても聞き取れなかったfarçousことファルsomethingを食べることにした。
farçousが何なのかのメニューに書かれた説明文を読んでもオニオンとクレープしか分からない。
そして余談だが、紅茶のポットが来ても、カップがどこにあるのかも分からなかった。
イザベラはずっと笑っていた。
イザベラが言うには、この辺りはアヴェロン県という地で、アヴェロンの伝統的な郷土料理らしい。
何とかという聞いたことのない草(野菜)とかミンチ肉とかを混ぜたパンケーキのようなものらしい。
(この時にメモしたノートを後から見ると、swiss chardと書いてあった。今調べたら、スイスチャードは不断草という野菜らしく、ほうれん草に近いらしい。味オンチの私だがそこまでオンチでもないらしい。)
運ばれてきてびっくり。
めちゃくちゃ草の色。
これは日本のパンケーキ的立ち位置なのか、お好み焼き的立ち位置なのか迷う。
何かをかけて食べるようなものではないらしく、イザベラがそのままナイフで切って口に入れた。
昼過ぎなので、ソースをかけないお好み焼き的立ち位置なのかも知れないと思い、私も真似して食べた。
例のごとく複雑な味がする。
フランスってやつは…全く。
昨夜のこともあるので、何が入っているか当てるのはやめておこうと思った。
野菜やハーブっぽい香りのするパンケーキのようなおかずだと認定。
お好み焼きよりもチヂミに近いかも知れない。台湾の胡椒餅よりも肉肉しくなく、ほうれん草パンケーキといったところかな。
どこの国にも、何かの野菜や肉を練り込んでメリケン粉とかと混ぜてパンケーキぽくする食べ物がよくある。山や牧場に囲まれた田舎のこの村では、ほうれん草みたいな緑の野菜を練り込んだfarçousが食べられているのかと思うと、お好み焼きで育った大阪人としても非常に興味深い。
↑唯一見つけたfarçousについてのnote。
farçousを食べ終えて、今日はイザベラと同じ宿なので、イザベラと一緒に歩き出す。
目的地サンコームドルトまではあと少し。
雨雲も抜けて青空が見えてきた。
サンコームドルトはフランスの最も美しい村認定されている小さな村である。
少しねじれたとんがり屋根の教会があるらしく楽しみである。
早く出発したおかげで早く村に到着できそうだから、さっさとシャワーを浴びてサンコームドルトの村を歩いてまわるのが楽しみだ。
ろうそくの火みたいな、ホイップクリームみたいなとんがり屋根が見えてきた。
川を渡ればサンコームドルトの村に入る。
この地方は羊のチーズが有名らしく、オーブラック牛ではなく、羊がお出迎えしてくれた。
羊に失礼がないように、チーズや小羊のローストとかをもしかしたら食べさせてもらうわね、と先にご挨拶をしておいた。
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牛の話