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憧れのカルカ-シムラー山岳鉄道!【インド#27】
16年前にインドのダージリンに行った時に、世界遺産のダージリン・ヒマラヤ鉄道、通称トイ・トレインに乗った。ニルギリ山岳鉄道と、その翌年にカルカ・シムラー鉄道というトイ・トレインが追加され、インドの山岳鉄道群(3大鉄道)として世界遺産となった。
ダージリンのトイ・トレインがとても旅情と可愛さに溢れていたので、いつか、他の2つも乗って、3大鉄道を制覇したい、と思っていたのである。今回は、その念願のもう一つのトイ・トレイン(おもちゃみたいな列車なのでそう呼ばれている)に乗る!
カルカというチャンディーガルから車で1時間弱の距離にある町から、のんびり列車を走らせてぐんぐん標高を上げて、標高1420メートルの高さにあるシムラーまで走るトイ・トレインは、観光列車として大人気のため、予約は全て埋まっていた。
しかし。
ネットを見ていると、朝1番にカルカ駅に行ったら、当日用の一般車両にどうにか乗れたという最新情報を見つけた。
よし、その方法で行こうと思い、計画を立てた。インド中の鉄道やバス、飛行機を検索できるixigoというアプリで時刻表をキャッチできた。全てsold outしていたが、朝5時台、6時台にカルカ・シムラー鉄道が出発しているのが分かったし、万が一、鉄道に乗れなくても、シムラー行きのバスが鉄道駅付近から出ていることも分かったので、とりあえずシムラーへは行けそうだった。
できればカルカからシムラーまで列車で上がっていきたいが、無理ならシムラー発のカルカに下っていく列車に再アタックしてもいい。そう思いながら、トイ・トレイン乗車作戦を固めていった。
朝6時台のチケットをアタックするには5時過ぎにはカルカ駅に到着しておきたい。逆算して、早朝過ぎてバスはないから、朝4時にホテルまで来てくれる車を手配してもらうことにした。
宿のオーナー、チャランがいなかったのでどうしようかな、と思っていたところに、インド名物の従業員風の宿に出入りしてる身元不明の男が、「何か頼みごと?」と聞いてきた。怪しい風貌ではある。パンカスというその男に一応私の予定を伝えて、朝4時にタクシーを手配してほしいとオーナーのチャランに頼みたいということを伝えた。
すると、パンカスはその場で友人のドライバーに電話をかけて何やら話をし始めた。私は疑心暗鬼になっていて、友人ぐるみの詐欺かもと疑ってかかり、「その電話の相手は誰なの?」「私にも分かるように英語で会話してくれない?」と頼んだら、英語で、カルカまで朝4時にタクシーで向かいたいゲストがいるけど頼めるか?というちゃんとした話を友人に電話で話していた。
それでもまだ疑っていた。
チャンディーガルはパンジャブ州で、そこからハリヤナ州のカルカへは別の州への移動になるから、料金がかなりかかる、と言う。
ほんまか、それ。
値段を聞いたら、4500円というインドの中ではかなり高額な料金であった。朝4時だし、1時間の距離だし仕方ないかもなぁ、でももう少し調べたい。
がしかし、サクッと調べてみたところ、あまりこのルートの情報がインターネットにはなかったので、まあいいか、と思いOKをした。
すると、「QRコードを送るから、デポジットで一部でいいから今支払って欲しい」という。
また怪しんでしまう。
「どうしてデポジットがいるの?」と聞くと、「早朝4時にホテルに迎えに来ようと思うと3時台から家を出ることになるから、君が本当に信頼できる客か示してもらいたいからだ」と言う。私は私で、「信頼できるドライバーなのか分からないから、今ここで払うのは不安だ」と伝えた。
お互いの信頼をかけた疑心暗鬼の戦いだった。
両者動かない戦いをしても仕方ないので、私の打開策として、ドライバーとパンカスの連絡先(WhatsApp)を教えてもらうこと、オーナーのチャランに連絡をとってパンカスを信頼していいか確認することを提案し、その場でチャランに連絡をしてもらった。すると、チャランいわく、パンカスは宿の改築をしてくれている友人で怪しい男ではないと分かったので、「絶対寝坊しないで、必ず朝4時に来てほしい」と伝えて、全額をキャッシュでパンカスに支払った。
当日の朝、3時半に起きて、4時前にフロントでタクシーを待ったが4時になっても車は来ない。チャランが起きてくれて、「3時にドライバーに確認の電話をしたか?」と私に聞いた。してないと伝えると、「1時間前に電話しないと来ないよ」と言う。
そんなシステムはないでしょうよ。私は絶対4時に来てねと念押しをしたし。
やはりパンカスに騙されたか、あの野郎、1500ルピーを持ち逃げしやがったな、とすら思っていた時、一台の車が来た。
たったの5分遅れただけだった。インドの感覚からするとかなり優秀であった。
ドライバーのサンジープは、ターバンを巻いたシィク教の人で、夜明け前の長い車内で2人きりになるのを私に不安な思いを抱かせないために、自分の息子を連れてきていた。パリッとしたジャケットを着たまだボリュームの小さいターバンを巻いた中学生くらいの息子は、とても姿勢が良く、礼儀も正しくて、疑心暗鬼は、全て消えた。朝4時だというのに、パンカスから「マダム、サンジープの車にちゃんと乗れたか?」というメッセージも来た。ごめん、パンカス。あんたのことをパンのカス野郎と思いかけていたよ。
結局みんながいい人たちだった。
旅でこういう信用できる人間を見極めるのは、非常に難しい。特に体調の悪い時は見誤ってしまうことが多い。こんなちゃんとした人たちを疑い続けたことは申し訳なく思うし、気を遣わせてしまったなと思うが、体調が悪いなりに、確認を怠らず油断せずにいたおかげでうまくいったとも言える。
こういうバランスはとても難しいけど、女の一人旅を安全に行うためにも、私は私の方法でリスクを回避すべく、これからも人を疑うことは続ける。疑うことは失礼かも知れないが、ただ疑っているのではなく、それは相手を信用したいがための行動だということを、今回気付けた気がする。
サンジープ親子に安心しきった私は、「ちょっと体調が悪いから、後ろの座席で横になっててもいい?」と聞いたら、「着いたら起こすよ」と言ってもらえて、1時間爆睡した。駅に着いて、サンジープ親子は、並んで背筋を伸ばしてずっと立って見送ってくれた。
(早く鉄道に乗れよという読者の方々、いよいよカルカ駅です。注:まだ乗らない。)
カルカ駅に着いて、切符売り場の窓口に行き、「予約していないけど6時台の列車に乗りたい」と伝えると、あっけなくすんなり指定席ではない一般車両のチケットを買えた。しかも、観光客向けの高い車両と違って、たった50ルピー(80円)だった。どの車両に乗ればいいのか分からなくて駅員に聞いたら、「レディース車両があるからそこに乗ればいいよ」と言われる。タッパーに入れたビリヤニを食べながら列車で待ち、レディース車両に乗り込む。
インド人カップルが来てレディース車両に座ろうとしたところ、駅員に「これはレディース車両だから、隣の車両に移れ」と言われていた。カップルの男は「僕は彼女と結婚したばかりで、これはハネムーン旅行なんだ。離れ離れになりたくない。」と食い下がっていたが、駅員に頑なにダメだと言われ、夫だけが超満員で乗車率200%くらいの隣の車両に移ることになった。夫は私に、「彼女は1人では不安でいっぱいだと思うから、君が彼女を守ってやってくれ。」となぜか託されてしまった。自分の不安を妻に押し付けてるだけだろうが、とイラッとしたが、一応「分かった」と言って、なぜか言葉が分からない外国人の女が、インド人の新妻を守ることとなった。
私の主な仕事は、次々と乗り込んでくる男たちに、駅員の代わりに「for LADIES!」と言うこと。何人もの男が諦めて降りて行き、レディース車両リーダーの頑張りのおかげで、私を入れて4人の女性で独占して、トイ・トレインは発車した。
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列車はのんびりのんびり進む。
そのスピードとは真逆に、私のテンションはもの凄い速さで加速した。
楽しい。
この小さな可愛い赤い列車が、一生懸命に山を登っていく。よくこんなところにレールを敷いたなと感心しながら、車窓から見える景色に夢中になった。
この時に思ったが、私は鉄道が好きなのかも知れない。鉄子?乗り鉄?だと思う。
青春18きっぷでのんびり旅するのも好きだし、夜行列車も好きだし、いろんな国のいろんな列車に乗るのも楽しくて、必ず列車に乗っているし、いつもワクワクしている。ゴダイゴの曲「銀河鉄道999」も旅でしょっちゅう聴いているし、1番好きなミュージカル「CATS」の1番好きなシーンは鉄道猫スキンブルシャンクスのシーンである。
これだけ証拠が揃っているから、私は鉄道が好きだということで間違いないと思う。
自分の好きなことを再発見できて嬉しかった。
インドのこれまでの旅の中で、1番テンションが上がっていると思った。咳も治りつつある。
しかし、訂正。
インドで1番テンションが上がった瞬間は、映画館でシャールクの映画「Pathaan」を初めて見た時であるから、トイ・トレインは2番目のハイテンションスコアである。
しかし、シャールクに負けず劣らずに列車に興奮していた。
車中では時折、新妻にチョコレートを貰ったり、飴ちゃんをあげたりして新妻を守った。
いくつか途中で停車する駅があり、長く停まる駅では、例の夫が、心配そうにわざわざ降りて窓際まで見にくる。大丈夫だと私が目で合図するのが、途中の駅の停車時の恒例となった。
半分以上過ぎた頃に、若い頃の明石家さんまのような顔をした男がレディース車両に乗り込んできた。よくしゃべり元気である。他の2人の女性の家族のようだった。レディース車両以外はむちゃくちゃ混んでいて、立ち乗りをしている人も多いのがカーブの時に窓から見えていたし、もういいだろうと思い、レディース車両リーダーは、駅員の許可なく、家族に限り男性も乗ることを勝手に許可した。そして、夫も呼んで、こっちに乗りな!と招いた。
夫は戦争から無事帰還した兵隊のように、新妻との再会に喜んでいた。
それからは、とっても賑やかな車両になってしまったファミリー車両。
そんな、カルカ・シムラー鉄道の写真を。
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新妻は不安どころか景色にも飽きて寝ているよ。
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シムラー駅に12時前に到着。
およそ6時間をかけて96kmの距離を走ったのんびりトイ・トレイン。Wikipediaによると、103ヶ所のトンネルを抜け、864ヶ所の橋を渡って走ったらしい。いつもは車内で居眠りする私だが、ずっと車窓から景色を見続けていても飽きなかった。莫大な数の同じアングルの車窓の写真と動画がそれを証明している。
この旅一番のクライマックス、最高の時間だった。
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