2、魏志倭人伝の記述は「魏の使節団がとった進路」とは関係がなかった
❍魏志倭人伝を素直に読むと
邪馬台国は九州のはるか南の海上に存在したことになってしまう
邪馬台国の話題になると、一番最初に、必ず言われる事です。つまり、当時、実際に使われていた里数を使って方位と距離を、記述通りの順番に辿っていくと明らかに現代の地理とは合わないのです。
❍なぜ、記述を順番通りに辿るのか
この様な疑問を持つ人は非常に少ないです。誰も彼もが必ず順番通りに辿っていき、結局、同じ様な問題にぶつかります。一番の理由は
「魏志倭人伝の記述が、魏の使節団が実際に邪馬台国に辿りついた、その時にとった進路である」
と考えられているからだと思います。
❍魏志倭人伝を読みながら思い浮かぶ風景
魏志倭人伝の記述から邪馬台国の場所を、見つけ出そうとしている人は頭の中には必ず、魏の使節団が思い浮かんでいると思います。
そして、魏の使節団はどの位の速さで進んだのか、安全なコースはどっちか、休憩はどれ位の頻度でとったのか。全て魏の使節団を中心に考えていくと思います。
邪馬台国に関する著書や研究に使われるタイトルのほとんどが、次の様な記述を含みます。
魏の使節団の見た風景
魏の使節団はどう進んだのか
などです。
ほぼ全ての人が何の疑いもなく、魏志倭人伝の記述は魏の使節団のとった進路であると考えます。邪馬台国を見つけだそうとする時の第一方程式の様なものです。
❍根拠は意外と薄い?
魏志倭人伝の記述が、魏の使節団のとった進路であると考える根拠は何でしょうか
ここで、著書を一冊紹介させていただきます。「日本古代史を科学する 中田 力」です。
こちらのご著書はとても科学的で、論理的に考えられています。他の邪馬台国に関する本とは、一味違う著書であると思います。私もこの本を読んで邪馬台国に興味を持ちました。ぜひ、御一読下さい。
こちらの本から引用させていただきます。
中田先生は、魏志倭人伝は邪馬台国への道を、順番に記述したのではないとする考え方に対して、以下の様に反論されています。ほとんどの人は、先生の考えに同意されると思います。
1、
記載された地名はこの順番に移動した魏の官僚の証言によると考えられる。
そして、
2、
どう考えてみても、ある地点からどのように目的地にたどり着いたかの記載をする場合、それも初めての旅ならば、なおさら、自分が見聞きした通りに順を追って、記述すると考えるほうが妥当である。
魏志倭人伝自体に、魏が邪馬台国の卑弥呼と外交を行うために、倭国へ使節団を送ったと、最後の方に記述されています。その時に、魏の使節団は恐らく邪馬台国へ、辿り着いた可能性が高いと考えられています。
1、では魏志倭人伝の記述が「その時の魏の官僚の証言によると考えられる」そして、そうであるならば、2、のように考えられるという事になります。みなさんも納得される考えだと思います。
しかし、ここで問題なのは、「その時の魏の官僚の証言によると考えられる」との記述です。2、についてはその通りだと思いますが、そのためには「その時の魏の官僚の証言」である必要があります。
1、の真偽が重要になるはずであります。その割に、「考えられる」という表現は、少し主観的な感じがしませんか。
❍普通だったらこう考えるでしょ
なぜ、この部分を誰も疑問に思わないのか。多くの人は次の様に考えると思います。
同じ魏志倭人伝の中でふれられているし
邪馬台国へ辿り着いたと書物で、確認できるのはこの時だけだし
あたり前の大前提だし
陳寿は魏の使節団の行動が書きたかったんだよ
それしか書けないでしょ
といった感じだと思います。
もちろん、魏志倭人伝にはこの部分が、魏の官僚の証言によるものとは記述していません。わざわざ書く必要はないとは思います。
しかし、少なくとも、魏の官僚の証言によるものと、確定できるまでの根拠はないと思いませんか。
普通に考えれば、可能性としては魏の官僚の証言によると考える方が高いと思います。しかし、別の可能性を一際考えないのは、危険ではないでしょうか。
❍ひとつの試しで考えてみよう
この様に誰もがあたりまえとして、受けとめられてきた事でも根拠は薄い場合もあると思います。こういった部分を見つけ出してみると、思わぬブレークスルーがあるかもしれません。
ですので、今回はひとつの試みとして
魏志倭人伝に記述されている方位や距離は
「魏が倭国へ使節団を派遣した時の、魏の官僚の証言または記録」ではない。
そのため
「魏志倭人伝に記述されている方位や距離」は魏の使節団の行動とは関係がなかった。
として考えてみたいと思います。
❍最後までお読みいただいてありがとうございます。
ほとんどの人はそんなわけないだろ、とお考えになると思います。
これまで書いてきた様にひとつのストーリーと考えていただきたいと思います。
ここまででは、説得力に欠けると思います。しかし、このままお読みいただけると、もしかするとと思えてくると思います。次回以降も、ぜひ読んでみてください。
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