ぐ飲み女子のアライブ感
生きている実感が得難い現代だ。
大きな震災を2ツ経験しているが、後の方は実は…楽しかった。
それもひとえに被害がまだマシだったからだが…
それでも予震に震え、暫くは靴を履いたまま眠る日々が続いた。
何故楽しかったのか?
当時はおじさんの彼氏とライダーズカフェをしていて、2週間ほどは状況的に朝から晩までべったりと一緒にいる時間が続いたからだ。
有難いことに店は震災の翌日から休むことなく開店し、片付けに疲れた常連客の憩いの場を提供することが出来た。
だが、彼氏とは始終一緒。
こんな幸せな時間は無かったのだ。
震災が楽しかったなんて、とても公言できない内容だが、実はそう感じている人も、確かにいる。
(ここにもいたね)
その時の客のひとりである若い男の子がそっと打ち明けてくれた。
翌日からボランティアに走り回ってたそうだ。
その訳は、こう。
『生きている実感がした』
ちょっと癖のある人だったけど、とても素直な感性を持っているな…と感じ入ったものだ。
タイトルに戻る。
知り合いの女性に潰瘍性大腸炎を患っている人がいた。
この病気は難病指定をされていて、症状が治まっても『完治』はなく、『寛解(かんかい)』といって継続的に症状が軽減されている状態としか見なされない。
かと言って、食事療法などで事実上完治させている人もいる。
彼女の特徴…モノを食べる時、とにかく噛まない。
差し向かいで食事をした日には気持ち悪くなるほどだ。
冗談ではなく、もぐもぐごっくん…しちゃうのだ。
周りから何度たしなめても直そうとしないし、彼女は自分の職務の上では患者さんに『よく噛んで食べてくださいね』などのたまうのだ。
自身でもその矛盾は重々承知の上で、それでも直せない…というか、それが快感でやめられないのだ。
もぐもぐ…くらいの咀嚼では食べ物はまだほぼ原型を保ったままだ。
それを飲み込むとどうなるか…喉に大変な負担を掛けながら押し込むように飲み込むことになる。
その、無理やり喉を通過する感じがやめられないんだそうだ。
ふと、そんな彼女のことを思い出していて、思い当たることがあった。
先に出した『生きている実感』についてだ。
なるほど…彼女にとっては、食べ物を飲み込む時の喉を締め付ける感覚…それこそが自分がいま生きている実感なんだな…。
現代というのは、そんなことにすら縋らねば、いま自分が立っている地面を感じることが出来ないのだ。
ちなみに『ぐ飲み』は九州地方の方言だったと知る。
その意味は『丸飲み』です。
喜びの循環^^