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老舗の饅頭と同窓会

こんにちは!NORIKO@どっぷりマレーシアです!

今回はマレーシアと全く関係ありません。今年の夏の思い出をエッセイのように綴ってみました。

30年ぶりに食べた老舗の饅頭

我が家は夏に一時帰国をし、自分の実家に子供たちと3人で3週間ほど滞在するのがここ数年の夏の過ごし方になっている。今年も私の両親といろんなところへ行き、美味しいものを食べ、楽しく過ごした。
今回子供の頃よく食べていた地元の老舗饅頭を久々に食べたいという話になり、約30年ぶりにその懐かしの饅頭屋さんに立ち寄った。 

子供の手のひらサイズくらいの丸い饅頭で、見た目は30年前と全く変わらない。パンダの印が押されているものと、お店の名前の印が押されているものがあり、味はどれも一緒なのにパンダはいつも兄妹で取り合いをしていたことを懐かしく思い出しながら、頬張った。

ん?んんんん??こんな、ただ甘いだけの味だった?!もっと食感もふわふわしていたはず…と予想外の感覚が襲い、頭の中は「??」でいっぱいになってしまった。 これ本当にあの時食べていた大好物の饅頭だろうか?
そんな私に母が言ったのだ。 「あの頃は美味しいデザートもあまりなかったけど、今は他にも美味しいものがたくさんあるからね〜。舌が肥えたんじゃない?」と。なるほどと思った。それだったら30年前のあの懐かしい思い出のままで留めておけばよかったなと思った。

20年ぶりの同窓会

その数週間後、今回の一時帰国の一大イベントでもある大学の同窓会に行った。卒業して20年ぶりの同窓会で、学年全体で母校に集まるというかなり大きな同窓会だった。人によっては20年ぶりの再会で、当時呼ばれていたあだ名や旧姓を名札にしてつけていたのだが、「久しぶり〜!」と声をかけられて、名札を見てもすぐにどんなつながりの人だったかが思い出せないという気まずい再会も何度かあり、20年という月日の長さを感じた。

中には、あの老舗饅頭のように、昔のイメージのまま留めておきたかったなあ〜なんて言う男の子も。それはそうだ。どんなにかっこよかった男の子も、20年経ち、中年男性になったのである。それは女子もしかり。もちろん、自分ももれなく中年女性になったのだ。

一方で友達というのは不思議なもので、20年前のあの頃に瞬時に戻れるのも確かなのである。私は大学時代女子寮に1年暮らしていたのだが、その寮の中でも格別仲良かった友達と、同窓会後ご飯を食べに行った。 みんな2人か3人の母親になっているのに、子供を預けて同窓会に参加していたこともあり、 一気に寮生活をしていたあの頃に戻り、涙が出るほど大笑いした。あの小一時間が、なんとも幸せな時間だった。そしてふと2児の母である今の自分を思い出し、とっても不思議な気持ちになった。

思い出の待ち合わせ場所

すっかり夜もふけ、大学の最寄駅に向かう。その駅に行ったのは何年ぶりだろうか。ふとある場所に目が止まる。 みどりの窓口近くの、柱のある角の場所。 そこは昔、大学時代お付き合いしていたボーイフレンドと、初めて待ち合わせをした場所だった。

色々あって知り合ったのは電話が最初だった。大学も違ったし、今の様にスマホでビデオ通話もできない時代。初めて会うまでお互いの顔を見たことがなかった。最初の待ち合わせはそれはそれは緊張した。そこは私と彼にしか分からない思い出の場所だったのである。

その彼はとってもハンサムで、プレイボーイで周囲の女性との話題が絶えず、浮気をしないかとても心配したものである。もう20年以上前の話だ。

今はその人だって中年おやじ。もちろん、今更連絡を取る術はないのだが、今もどこかで生きているであろう。元気かな、今は何してるんだろうか…と一瞬懐かしい思い出が蘇ってきた。
その直後、その日の同窓会での色んな再会シーンを思い起こし、あの青春の思い出はあのまま留めておくのがいいな。今会ってしまうとまたあの老舗饅頭のような残念な思いをしてしまうかもしれない。と思った。思わず中年おやじになった彼を想像し、クスッと笑いながら、思い出の地を後にした。


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