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この人がどなたかご存知ですか?
「この子がどなたの娘かご存知ですか?」
ある男が店員(若い娘)に激昂する客に対して言った言葉だ。そして、「あの娘さんにそんなことを言うなんて、命知らずだなと思いまして」と追い討ちをかけるのである。するとビビったのか客の威勢が急に落ち着き、しまいには一言吐いて席に座ったのだ。
参照:『アイネクライネナハトムジーク』伊阪幸太郎
この話を読んで、第三者が当事者を保証することを通して真実味が増すことが現実世界でも多くあるなと感じた。
例えば、ゴルフの練習場で見知らぬおじさんが急にあなたに声をかけてきた。グリップの位置が高いから〜なんやかんや言ってくる。あなたは見知らぬおじさんが言うことなんさ無視して、打ちっぱなしを続けていたがトイレから帰ってきた友人が目を丸くして、背中を叩いてきた。
「あのおじさんって元プロだった人じゃん、ラッキーだなお前」
と言うわけである。するとさっき無視していたアドバイスが急に凄いことに聞こえてくるのだ。
ここで重要なのは、おじさんではなく第三者(友人)が身元を明かすという点だ。本人がいかに凄いかと語ったとしても胡散臭く、詐欺ではないかと思ってしまう。
このテクニックは合コンであったり、マルチ商法で使われるらしい。
そして、簡単に不特定多数へと発信ができるようになった今、新たな方法が取られていると感じる。それは所有物や経歴を見せることだ。例えば別荘や学歴、高級車を見せることで発信する内容の担保をつけようとしている。いわば動画などで見る”もの”が第三者の代わりをしているのである。
だがしかし、見せている”もの”がハリボテである可能性を疑わなくてならない。上記の”もの”への担保は当事者が真実を言っている前提に成り立っている。当事者に騙す悪意があれば、”もの”を加工するのは簡単なのである。
視点を変えて、性悪説を前提にすべての人が信頼できない世界が来た時のことを考えてみた。僕は政府か巨大な組織が人間を担保するしかないだろうと考える。ランク社会である。嘘をつくものには嘘人間というラベルが貼られるのだ。
しかしながら、このような「Big Brother is watching you」みたいな世界も怖いと思うのである。やはり、見ている側が複数のメディアを通すことで、当事者が人を騙しにくい環境を作っていくしかないのかもしれない。俗に聞くメディアリテラシー的なもので。